鴨川にミゲル、宮田父も…彼らなくして王者なし!『はじめの一歩』最強ボクサーを支えた「名トレーナーの戦略」の画像
「ベストバウト オブ はじめの一歩! 鴨川源二VS.ラルフ・アンダーソン 千堂武士VS. アレクサンドル・ヴォルグ・ザンギエフ 焼け野原の鉄拳編&日本フェザー級王座決定戦編』(講談社プラチナコミックス)

 プロボクシングの熱い世界を描く『はじめの一歩』(森川ジョージ氏)において、ボクサーを指導するトレーナーの存在は物語に欠かせない。

 彼らはジムでボクサーを鍛え上げ、試合ではセコンドとして大切な選手に的確な指示や助言を出し、ともに勝利を目指す。作中でチャンピオンに君臨した選手の陰には、必ずといっていいほど優れたトレーナーがいた。

 今回は、本作に登場するトレーナーたちが見せた戦略の数々を通して、彼らの偉大さを読み解いていきたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■怪物・鷹村に基礎を叩きこみ、理想のボクサーに育てた鴨川源二

 『はじめの一歩』の名トレーナーとして、絶対に外せないのが鴨川ジム会長の鴨川源二である。彼はWBC世界J(ジュニア)ミドル級からスーパーミドル級までの4階級制覇を達成した鷹村守を見出し、主人公・幕之内一歩を日本チャンピオンに育てた名伯楽だ。

 その指導はハードな根性論を主体としながらも、ボクシング理論は論理的で信頼感が高い。現役時代の一歩が「会長を信じて戦えば大丈夫だ」と全幅の信頼を寄せていたことからも、その卓越した指導力がうかがえる。

 鴨川の手腕が特に光ったエピソードが、ブライアン・ホークとの試合で判明した鷹村の育成方針だろう。鴨川は鷹村と出会った時点で、「練習しなくても日本チャンピオンになれる実力がある」と彼の才能を見抜いていた。

 鷹村の勧誘に成功した鴨川は、その桁外れの才能の持ち主にボクシングの基礎を徹底的に叩きこむ。アニメオリジナルで描かれた「鷹村過去編」では地道なロードワークと左パンチの反復練習をひたすら繰り返させ、スパーリングを一切やらせなかったほどだ。

 そうして完成したのが、天から授かった「野生」と、何万回と練習して体に刻み込まれた「科学」を融合させた怪物ボクサー・鷹村守であった。ホーク戦では、意識を失いながらも小さく鋭く急所を貫くパンチを放ち、相手セコンドのミゲル・ゼールをして「ボクサーの…理想像だ!!」と言わしめた。

 鷹村の天賦の才に驕ることなく、体に染みつくまで基本を教え込んだ鴨川は、『はじめの一歩』における最強ボクサーを生み出した立役者である。

■「最後の太陽(ラストサン)」ウォーリーの世界戦で奇策を授けたミゲル

 鷹村VSホークでホークのセコンドについたミゲルは、のちに評価を大きく上げた名トレーナーである。かつて圧倒的な才能を持つホークを送りながら、鴨川・鷹村師弟に敗北を喫したが、第1392話で再び愛弟子を世界戦の舞台に送り出した。

 その選手の名はウォーリー。「最後の太陽(ラストサン)」とミゲルが呼ぶこの天才ボクサーは、一歩をもっとも苦しめた相手でもある。ミゲルとウォーリーの師弟は、フェザー級の頂点に立つ伝説の王者リカルド・マルチネスとのタイトルマッチに挑んだ。

 野生児さながらの奔放な動きが持ち味のウォーリーは、試合の序盤からリカルドを翻弄する。それでも「基本を極めたリカルドならいずれ対応するはずだ……」と誰もが思っていたが、当のリカルド自身は「手に余る」と、冷静に不利を呑み込んでいた。

 リカルドにそこまで言わしめた理由は、ミゲルが授けた「リカルドの眼球を狙え」という非情な策であった。無敗のチャンピオンといえども眼球は鍛えようがなく、一度でも損傷すれば敗北は必至。この“悪魔の知恵”と言われるほどの凶悪さは、世界の頂点の厳しさを知り尽くしたミゲルだからこその発想だ。

 このエピソードのポイントは、ミゲルがウォーリーの才能に慢心することなく、リカルドを倒すための最善策を授けたことだろう。残念ながら試合には敗北したが、ボロボロのウォーリーとともに満足げな表情を見せたミゲルが印象的だった。

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