■夢と遊び心にあふれる「ファンタジーサンドイッチ」
最後に紹介するのは、コミックス第15巻「空飛ぶサンドイッチ!?」、16巻「パイナップルの秘密」で陽一が披露した夢と遊び心にあふれる「ファンタジーサンドイッチ」だ。
この料理の相手は、“日本の料理なんて食べたくない”と駄々をこねる、ロマリア王国の12歳の皇太子。陽一は無理に食べさせようとするのではなく、“夢あふれる心躍る食事”をテーマに、子ども心をつかむ料理で勝負を挑んだのである。
まずベースとなるのは、余熱釜でじっくり火を通すことで、焼きムラがなく中までふっくらと仕上げた特製パン。そのパンには、ハム、チーズ、ローストビーフ、スモークサーモン、ハンバーグ、トマト、ホウレン草、マーマレード……といった、子どもが喜ぶであろう多彩な具材が惜しみなく挟み込まれている。
そして、この料理最大の見どころが、そのファンタジックな盛り付けだ。完成したサンドイッチを金型でチョウやニワトリ、アヒル、ハトなどの形に抜き、皮を取り除いた丸ごとのパイナップルの土台に敷き詰めたパセリに、ピンで1つ1つ固定していく。
そうして完成したのが華やかな一皿「ファンタジーサンドイッチ」だ。まるで動物たちが草原の上で遊んでいるかのような、童話のワンシーンのごとき光景を再現。さらに、土台のパイナップルは食後のデザートとして味わえるなど、見た目だけでなく食べる順番に至るまで計算された工夫が光る。
この夢あふれる料理は、かたくなだった皇太子の心を動かす。日本料理を嫌っていた彼は、この一皿をきっかけに日本の食文化にも興味を抱くようになるのである。単なる「おいしさ」だけでなく、「食べる楽しさ」そのもので人の心を変えた名料理だった。
『ミスター味っ子』に登場する奇抜な料理の数々は、決して見た目のインパクトだけを狙ったものではない。意外な食材の組み合わせや常識では考えられない大胆な発想の裏に、「どうすればもっとおいしくなるのか」「どうすれば食べる人を笑顔にできるのか」という、料理人としてのアイデアと、料理への深い愛情が詰め込まれていた。
本作を通じて作者・寺沢大介氏が描いた自由な発想と飽くなき探究心は、連載当時から現代に至るまで、多くの読者に料理の奥深さと楽しさを伝え続けているのである。
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