■“黄金の夢”を与えた憧れの存在…名もなきギャング

 第5部では舞台をイタリアに移し、DIOの息子であるジョルノ・ジョバァーナが新たな主人公として活躍する。

 ジョルノは15歳という若さながら「ギャングスター」に強い憧れを持った、実に個性的なキャラクターだ。その夢をいだくきっかけとなったのが、ジョルノが幼少期に出会った1人の名もなきギャングの存在である。

 実母に育児放棄され、義父からは虐待を受けるという過酷な幼少期を過ごしてきたジョルノ。そんなある日、学校からの帰り道に血だらけで倒れている男を発見したことが、彼の人生の大きな転機となる。

 倒れていた男はギャングであり、すぐに追っ手が駆けつけるのだが、ジョルノはとっさにウソをついて男の命を救った。これは、「自分と同じようにひとりぼっちでさびしそうだな」と、その男に奇妙な共感をいだいたがゆえの行動だった。

 のちに男は再びジョルノの前に現れ、「君がしてくれた事は決して忘れない」と告げる。この出来事を境に、ジョルノの日常は一変した。

 男の存在が影響したのか、義父の虐待や町の悪ガキたちのいじめがぴたりと止み、ジョルノは生まれて初めてまともな日々を送れるようになったのである。

 一方、男はジョルノと馴れ合うことはなく、いつも遠くから見守り続けた。彼のこの態度は、ジョルノに“人を信じること”を教え、同時にその姿は彼の心に強烈な憧れとして焼き付いた。

 名前も正体も謎に包まれた男だが、彼の存在がジョルノの芯の部分を作り上げたといっても過言ではない。作中の出番はわずかだが、1人の少年がギャングスターへと駆け上がるきっかけを築いた、忘れることのできないキーマンである。

 

 特殊能力を駆使した巧妙なバトル描写が魅力の『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズだが、そこに描かれる人間模様もまた、本作の大きな見どころの1つである。

 今回紹介したキャラクターたちのように、たとえ特別な力は持たなくとも、その勇気や知恵で主人公たちを支え、窮地を乗り越える突破口となった展開は少なくない。とっさの機転や人との絆によって見せる行動力にこそ、能力の強弱では測れない強さが感じられるのだ。

 

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ジョジョの奇妙な冒険 第1部 ファントムブラッド 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
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