荒木飛呂彦氏が描く『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズといえば、個性豊かな能力を持つキャラクターたちが繰り広げるバトルが大きな見どころだ。しかしなかには、特殊能力を持たない一般人が物語を大きく動かすことも少なくない。
その代表格が、第1部で登場したロバート・E・O・スピードワゴンだろう。彼は物語の名解説役を務め、以降も自身が設立したスピードワゴン財団を活用し、シリーズを通してジョースター家をはじめ、仲間たちをサポートしてきた。
彼のように特殊な力を持たずとも、その人間性やとっさの行動で主人公たちの運命を大きく変えたキャラクターは、シリーズを通してたびたび登場している。
この記事では『ジョジョ』の歴史に多大な影響を与えた、意外なキャラクターたちの活躍を見ていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■勇気によって「あした」をつかみ取った少年…ポコ
1986年に連載が始まった『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部では、記念すべき最初の「ジョジョ」である、ジョナサン・ジョースターが活躍する。
ディオ・ブランドーとの因縁に立ち向かうジョナサンは、屍生人に対抗するため「波紋」の技術を習得し、数々の死闘を繰り広げていく。そんな彼のピンチを救った一般人が、ウインドナイツ・ロットの町に住む少年・ポコだろう。
気弱な少年ポコは、ジョナサン一行と出会ってからも、常に遠巻きに彼らの戦いを傍観しているだけだった。そんな彼がまさかの活躍を見せたのが、強敵・タルカスとの戦いでの一幕である。
タルカスの策略によってジョナサンだけ部屋に閉じ込められてしまい、仲間たちはその救出方法に頭を悩ませてしまう。
部屋の扉は堅牢で、入れそうなのは狭く小さな明かり窓のみ。あまりの恐怖に怯え、震えるポコだったが、その脳裏にかつて自身をいじめていた悪ガキたちの記憶と、そんな自分を叱咤してくれた姉の力強い言葉がよみがえる。
自分の町と姉を守るためにポコは自らを奮い立たせ、その小さな明かり窓から怪物・タルカスが待ち受ける部屋へと侵入。そして、タルカスの一撃でケガを負いながらも、決死の覚悟で扉のロックを解除し、我が身を挺してジョナサン一行のピンチを救ったのである。
かつてはいじめっ子たちへの恐怖から、「あした」やり返してやると虚勢を張るばかりだったポコ。しかし、真の意味で恐怖を克服し、晴れやかな表情で「ねーちゃん! あしたっていまさッ!」と死地へ飛び込んだ姿は、第1部における屈指の名シーンだ。
特殊な力を持たない一般人でありながら、ジョナサンが最終決戦に臨むためのバトンをつないだ、シリーズ屈指の功労者といえるだろう。
■驚異の精神力に主人公もたじたじ…川尻早人
第4部では、日本の杜王町を舞台に奇妙な日常や事件の数々が描かれる。多数のスタンド使いが登場するなかで、物語終盤では町に潜む殺人鬼・吉良吉影を追うサスペンス性の強いストーリーが展開された。
あの手この手で追撃をかわしてきた吉良だったが、彼を追い詰める最大の要因となったのが、単なる一般人の小学生・川尻早人である。
11歳の少年の早人は、顔を変えて父・川尻浩作へとなりすました吉良と奇妙な共同生活を送ることとなる。やがて父の正体にたどり着いたものの、吉良が新たなるスタンド能力「バイツァ・ダスト」に目覚めたことで形勢は逆転。この能力により、早人が他人に吉良の正体を明かした途端、すべては爆破され、時間が巻き戻るという異常な状況に追い込まれる。
これで万事休す……かと思われたが、ここから早人は凄まじい行動力を発揮し、驚くべき方法で突破口を切り開く。
彼は、吉良がひっそり飼っていた植物のようなスタンド「猫草(ストレイ・キャット)」の能力を利用し、なんと能力の本体である吉良の殺害を画策。この暗殺自体は失敗に終わったものの、彼は何度もループする時のなかで学習を重ね、自身が吉良と対決する現場に主人公・東方仗助が偶然通りかかるよう、見事な策を張り巡らせた。
自身は戦う術は持っていないが、それでも知恵と勇気を振り絞り、作中最強ともいえる殺人鬼の能力を奇策によって突破したのである。
その後も、自身が代わりに爆破されることで吉良の策略を防ぐなど、仗助すら驚く常人離れした精神力を披露した早人。彼をただの無力な子どもだと侮ったことこそが、吉良の最大の敗因だったのかもしれない。


