荒木飛呂彦氏が手がける大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の魅力の1つに、特殊能力「スタンド」を用いた巧みな攻防が挙げられる。登場人物ごとに個性的な能力を持つスタンドだが、作中ではこの特性をいかに見極め、攻略するかが勝敗を分ける鍵となる。
しかし、中には敗北したものの、使い方次第では最凶の存在になり得るような凄まじい強さを感じたスタンドも存在する。
そこで今回は、まさに「初見殺し」ともいえる、対策なしでは攻略困難だったスタンドを見ていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■あらゆるものをバラバラにする恐るべき暗黒空間「クリーム」
スタンド能力の概念は、1989年に連載が開始した第3部にて、初めて登場した。
主人公・空条承太郎たちの行く手には、幾度となく敵のスタンド使いが立ちはだかり、互いの能力を駆使した激闘が繰り広げられた。
そのなかでも、他の追随を許さない高性能ぶりを見せつけたのが、DIOの側近であるヴァニラ・アイスが操る「クリーム」だろう。
旅の終着点であるカイロにて一行を待ち構えていた強敵で、DIOの館に突入したモハメド・アヴドゥル、ジャン・ピエール・ポルナレフ、イギーと戦うこととなった。
その能力は、スタンドの口のなかに広がる「暗黒空間」に飲み込んだあらゆる物を跡形もなく消し去るというもの。この暗黒空間は物体の種類や硬度を問わず、触れた物すべてを一瞬で崩壊させる。
しかも、本体であるヴァニラ自身も暗黒空間に身を隠せるため、スタンドバトルにおける勝ち筋の1つである「本体を直接攻撃する」ことも容易ではない。
加えて、スタンド自体も姿を隠すことができるため、攻撃の軌道を予測することも困難である。防ぐこともできず、触れれば即死級の攻撃が見えない角度から飛んでくるのだから、まさに初見殺しのスタンドといえるだろう。
作中では最終的にポルナレフに敗北はしたものの、その強力無比な能力でアブドゥルとイギーという重要な仲間を葬り去っており、読者に大きな衝撃を与えた。
ちなみに作者である荒木氏は、のちにこのキャラクターについて、「イヤな奴を描こうと思って描いた」(画集『JOJO 6251 荒木飛呂彦の世界』)とコメントしている。
相手への容赦が一切ないその残忍なスタンド能力は、こういった作者の意図が反映された結果なのかもしれない。異常な忠誠心と相まって、シリーズ屈指の凶悪さを誇るスタンド能力といえそうだ。
■あまりにも重すぎるジャンケン勝負の代償「ボーイ・II・マン」
第4部では、舞台を日本の架空の都市・杜王町に移し、この地に集うスタンド使いたちの奇妙な日常が描かれる。
戦闘向けの能力だけでなく、日常生活にも活用できそうな面白いスタンドが多数登場するなか、意表を突く能力で活躍したのが、小学生・大柳賢が操る「ボーイ・II・マン」である。
賢は、漫画家・岸辺露伴の前に突如現れ、執拗に「ジャンケン」をしようとせがんでくる変わった子どもだ。流れからジャンケンに応じてしまう露伴だったが、実はこれこそがスタンド「ボーイ・II・マン」が発動する条件だったのである。
「ボーイ・II・マン」の能力は、本体と相手の「ジャンケン勝負」において、勝った相手のスタンド能力を徐々に奪うというもの。
3回先に勝つとスタンド能力を完全に奪えるが、1〜2回勝った段階でも、奪った能力の一部を限定的に操ることができる。
この能力に対抗する手段はただ一つ、彼にジャンケンで勝利するしかない。無論、彼に3回敗北した場合、スタンド能力は完全に奪われ、スタンド使いとしては再起不能になってしまう。
シリーズを通して数多くのスタンド使いが登場するが、彼のように相手のスタンド能力を強奪するタイプは非常に珍しい。
「そもそもジャンケン勝負に応じなければ良い」というのが最も簡単な対策だが、罠にはめられた露伴同様、まさか子どもとのジャンケンがスタンドの発動条件だとは誰も思わないだろう。また、本体が小学生である点も、相手の警戒心を緩めることに一役買っている。
賢は、後に放送される実写ドラマ『岸辺露伴は動かない』にも登場し、原作同様の激しいジャンケンバトルを展開している。誰しもが知る遊びを、手に汗握る命がけのバトルへと変えてしまう、シンプルながらも極めてやっかいなスタンドといえる。


