人を喰らう鬼と、その脅威に立ち向かう人間たちの死闘を描いた人気漫画『鬼滅の刃』(作:吾峠呼世晴氏)。本作に登場する鬼は、陽光の力を吸収する特別な鉄で作られた「日輪刀」で頸を斬るか、日光を浴びなければ倒すことができない。
それゆえ、鬼を殲滅する組織「鬼殺隊」の隊士にとって、剣技の才能は必要不可欠だ。彼らは日輪刀を使用し、特殊な「呼吸法」で身体能力を極限まで高めることで、強靭な鬼たちに立ち向かう。
しかし、隊士の中には才能や体格に恵まれず、苦悩する者もいる。剣術に向き不向きがあることは当然だが、彼らはそれでも鬼と戦うことを諦めず、やがて独自の対処法を編み出していった。
今回は、そんな特異な方法で鬼に立ち向かった剣士たちについて深掘りしていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■追い詰められて鬼を喰った…“鬼喰い”の不死川玄弥
主人公・竈門炭治郎と同期の剣士である不死川玄弥は、風柱・不死川実弥の実弟だ。しかし、柱として鬼殺隊を支える兄とは対照的に、玄弥には剣士としての才能がなかった。思い悩んで追い詰められた玄弥は、“鬼を喰う”という常軌を逸した手段に出る。
この「鬼喰い」とは、鬼の一部を食べることで一時的に鬼のような再生能力と筋力を得る特異能力である。これにより、玄弥は他の隊士たちと肩を並べて戦えるようになった。
当然、「鬼喰い」は誰もができることではない。強靭な咬合力と特殊な消化器官を持つ、まさに特異体質の玄弥だからこそ可能な力であった。さらに、食べた鬼の強さに比例して能力が向上するため、敵が強ければ強いほど自身も強くなるという規格外の能力でもあったのだ。
剣の才能には恵まれなかったが、この特異体質を持つ玄弥は、ある意味鬼殺隊随一の逸材だ。しかし、鬼を喰うという行為は他の隊士たちから到底許容されるものではない。実際、兄・実弥は玄弥からその事実を聞かされた際に激高し、躊躇なく弟の目を潰そうと襲いかかるほどの嫌悪感を示した。
そんな彼に救いの手を差し伸べたのが、岩柱・悲鳴嶼行冥である。『鬼滅の刃公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』によると、鬼を喰らい暴走していた玄弥は、行冥に救われたという。行冥は彼を放っておくことができず、自身の弟子として面倒を見るようになったのである。
「刀鍛冶の里編」では、炭治郎と共闘し、上弦の肆・半天狗との戦いで重要な役割を果たした玄弥。鬼殺隊では珍しい南蛮銃を使いこなし、鬼喰いで体を強化できる彼は、鬼殺隊になくてはならない重要な戦力となった。
■腕力がなくて頸を斬れない剣士…“毒使い”の胡蝶しのぶ
鬼殺隊の最高位である柱の中にも、剣士として苦悩した者がいる。それが、蟲柱・胡蝶しのぶだ。
身長151cm、体重37kgと小柄な体格のしのぶは腕力が足りず、日輪刀で鬼の頸を斬ることができなかった。これは鬼殺隊士として致命的な欠点であったが、そんな絶望的な状況を打破したのが彼女の薬学の知識である。
研究の結果、しのぶは鬼を殺すことができる毒の開発に成功。そして、鬼が嫌う「藤の花」から精製した毒を特殊な形状の日輪刀で鬼の体内に注入するという独自の戦法を確立させた。
鬼の頸を斬る筋力はなくても、彼女の鋭い“突き”の威力は凄まじく、岩すら貫通するほど。この並外れた突きと体術を磨き上げ、彼女ならではの戦法を武器に柱の地位にまでのぼり詰めたのだ。
突き技に特化した彼女の日輪刀は、刀鍛冶の里の里長である鉄地河原鉄珍が手がけたものだ。刀の内部は特殊な構造になっており、鞘に仕込まれた毒を調合できる仕組みになっている。刀身は一般的な刀とは異なり、西洋の刺突用武器「レイピア」のように細長く、そして先端は針のような形状で、まるで注射器のように鬼に毒を注入することができる。
しのぶはこの特殊な刀を用いて、対峙する鬼に応じて毒の調合を変えながら戦う。これは毒の情報が鬼の間で共有され、対策されることを避けるためなのだが、戦闘中に瞬時に相手を見極めて毒を調合する彼女のポテンシャルは底知れない。
しのぶが戦う目的は、鬼に殺された偉大な姉・胡蝶カナエの遺志を継ぎ、その仇を討つことにある。体格に恵まれなかった彼女が自身の知識と努力で鬼と戦う方法を見出し、柱にまでのぼり詰めた背景を思うと、その並々ならぬ想いの強さに胸が熱くなってしまう。


