■スピードの達也か、完成度の和也か?

 投手としての達也と和也をこうして比較してみると、双子の兄弟でありながら異なるタイプの優秀なピッチャーであることが分かる。優劣をつけようとすること自体が野暮かもしれないが、あえてその点について深く考えてみたい。

 2人のあいだに決定的な違いがあるとすれば、それは変化球の質だろう。達也は作中で変化球をあまり投げておらず、使ったとしても緩急をつけるぐらい。基本的にはストレートで真っ向勝負するスタイルである。

 和也もピッチングの軸はキレのあるストレートだが、アニメの描写まで含めるならば、カーブ、スライダー、シュートといった多彩な変化球を器用に投げ分けていた。原作でも、草野球で達也と対決した際にスローボールを投げられることが示唆されており、いわゆる“チェンジアップ”のような球種も習得していた可能性がある。

 ピッチャーの能力を語る上で、変化球の良し悪しは外せない要素である。それを考慮すれば、筆者は変化球もソツがない和也に僅差で軍配を上げたい。

 だが、150km/hを超える達也のストレートが持つロマンも捨てがたい。「いっそ直接対決してほしかった!」と叫びたくなるくらい、2人は甲乙つけがたい名投手なのだ。

 

 今回の比較を通じて強く感じたのは、達也と和也では評価の対象となる時期が違うという点だ。達也は高校1年生から野球部に入り、3年生で甲子園を制した。一方の和也は、南の夢をかなえるために幼い頃から努力を続け、高校1年生のときに命を落としている。つまり両者が野球部で汗を流した時間も違えば、比較できる瞬間も高校3年時と1年時でかなりの差異がある。

 わずか2年弱で驚異的な成長を遂げた達也を称えるべきか、1年生の時点で3年時の達也と比肩するほどの和也を称賛すべきか。読者であるあなたは、どちらが上だと思うだろうか。

 

■不朽の名作を読み返したい! あだち充『タッチ』をKindleでチェック

タッチ 完全復刻版(1) (少年サンデーコミックス)
タッチ 完全復刻版(1) (少年サンデーコミックス)
  1. 1
  2. 2
  3. 3