■“笑いの常識”を塗り替えた不条理ギャグの金字塔『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』
そして、大黒柱であった『ドラゴンボール』の連載が終了し、黄金期の絶対王政が揺らぎ始めた1995年末、『ジャンプ』に彗星のごとく現れ、日本のサブカルチャー界の空気を一変させたのが、うすた京介さんの『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』である。
スーパーマーケット「西友」で購入した白い紳士用肌着に身を包み、謎の格闘技「セクシーコマンドー」を操る高校生・花中島マサルと、奇妙で癖の強い「ヒゲ部」の部員たちの日常を描く本作。この説明を書いているだけでも若干混乱してくるが、実際に読めば、その混乱は一層深まるに違いない。
唐突なポージングに「めそ」「モキュ」「ボスケテ」といった独特すぎるワードセンス、会話の流れを平然と置き去りにする展開など、その手法は当時において極めて革新的だった。
そして、その勢いは漫画界だけにとどまらない。1998年にはTBS系深夜番組『ワンダフル』内でテレビアニメ化され、PENICILLINが手がけた主題歌『ロマンス』も強烈なインパクトを残した。ヴィジュアル系ロックの妖艶で激しいメロディは、本作の持つ破天荒な世界観に驚くほどシンクロしていた。
その影響力は漫画家志望者にも及び、『マサルさん』風のナンセンスギャグを追い求める者が急増。実際、『ジャンプ』の新人賞募集ページには「マネもほどほどに…」という異例の注意書きが掲載されたことすらあったほどである。
まさに王道バトルが中心だった黄金期から、次世代の混沌とした時代へ。『ジャンプ』の舵を強引に切り替えた、不世出の作品だったのである。
今でもふと気になるのは、マサルの両肩にあった謎の輪「オレのチャームポイント」。あれはいったい、何だったのだろうか。
時代を先取りしたカオスな人間関係を提示した『ボンボン坂高校演劇部』。わずか7ページという制約を実験場へと変え、不条理と哀愁を詰め込んだ『王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜』。次世代の混沌を切り拓いた『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』。いずれも今読み返してもまったく色あせることなく、むしろ現代的ですらある。
黄金期の『週刊少年ジャンプ』が誇った圧倒的な発行部数。その大躍進を支え、誌面に多様性と奥行きをもたらしていたのは、王道作品だけではない。今回紹介したような、あまりにも“尖りすぎたギャグ漫画”たちの存在もまた、不可欠だったのである。
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