■『バイオ』シリーズの物語世界の今後は

宇内:今回の『レクイエム』では、『バイオハザード』シリーズ全体のシナリオが動いた印象がありました。スペンサーの裏側が描かれたことでより深い世界観が見えてきたような感覚があります。スペンサーの登場にはどんな狙いがあったのでしょうか。

熊澤:今回、ラクーン事件の隠された真実を描くにあたり、「レクイエム」という副題のとおり過去を清算するという意味も含めて、ラクーン事件の元凶でもあるアンブレラの存在は不可欠でして、そこでスペンサーも登場することになりました。彼は『バイオハザード5』のDLCなどにも登場したことがありましたが、これまであまり深く描かれたことがなかったんです。

宇内:確かに、手記などで名前を見ていたので、スペンサーはおなじみの印象がありましたけど、顔出しでセリフもあるというのは『バイオハザード5』くらいでしたよね。
 さて、『バイオハザード』シリーズはキャラクターがナンバリング作品ごとに年齢を重ねていくシリーズになりました。これからもキャラクターたちは年齢を重ねていくことになると思いますが、今後はどのようにシリーズと向き合っていかれるのでしょうか。

熊澤:キャラクターが年齢を重ねていくという表現をするようになったのは『バイオハザード4』以降からで、実は『バイオハザード2』から『バイオハザード3』では時間軸を遡るようなこともやっています。だから、明確にルールを決めているわけではないんですよね。
 ただ、現在のプレイヤーのみなさんに没入感を持って遊んでもらうためには、現代を舞台にするのが良いだろうという判断で時系列を動かしている部分はありますし、その作品で描きたいキャラクター、ストーリーによっても時系列は変わってきます。事実、『レクイエム』においても、8年前の時系列だったり、さらに過去の時系列も登場しています。だから今後、どんな時系列に進むのかは作品次第ですね。
 もちろん登場したキャラクターや起きた事件といった設定は崩さないですし、シリーズが大切にしてきた核の部分は守っていきますが、同じような作品ばかりが続くとプレイヤーの皆様から飽きられてしまうので、これからも新しいチャレンジはしていきたいですね。

宇内:なるほど、そうなんですね!

熊澤:たとえば、『バイオハザード ヴィレッジ』では死後の世界や菌根の記憶世界といった世界観も登場させたことで、新たな『バイオハザード』を描くことができました。こういった新たなチャレンジについては、先ほどのカメラ視点の話と同様ですが、プレイヤーの皆様の反響もしっかり確認して、新たな作品作りに生かしていこうという考えで、これまでも開発を進めてきています。

宇内:ちなみに、舞台を日本にする、というアイデアは出たことがありますか?

熊澤:日本という舞台は、『バイオハザード』シリーズの日本人ファンならきっと誰しも考える場所だと思いますし、自分自身も考えたことはあります。日本にいるメンバーが主体となって開発していることもあって、開発メンバーの誰しもが考えたことはあるのではないでしょうか。実際には、これまでゲームの舞台としては登場していないのですが、今後どこかで登場するかもしれませんね。

宇内:ここまでのお話を踏まえて、今後に向けて『レクイエム』での収穫や反省点があれば教えてください。

深澤:今回は非常に高い評価をいただいたと思っています。自分としては高く評価していただいた部分、ポジティブに受け止めていただけた部分を、今後はさらにブラッシュアップしていきたいなと思っていますね。これからもみなさんに喜んでいただいたり、驚いていただいたりするような体験を提供していけるように頑張りたいなと思っています。

熊澤:ゲームにおける収穫としては深澤がお話した通りですね。反省点については、どちらかというと失敗談という意味での余談なんですが、発売前のインタビュー中の自分のコメントで『レクイエム』のプレイを「グレース・パート」という言い方をしてしまったんです。
 まだその当時ではレオンが登場することを発表していなかったので、「パート」という言い方をしたおかげで、一部の熱心なファンにグレース以外の主人公が登場するんじゃないかと予想されてしまって……帰国してから会社で怒られてしまいました(笑)。

宇内:プロデューサーはどうしても表に出なくちゃいけない立場ですし、発言にも気を遣わないといけませんから本当に大変ですよね。

熊澤:自分でもビックリしてしまいました。そんなこと言っちゃったんだ、と(笑)。

宇内:面白いお話ありがとうございます。では、最後の質問です。『レクイエム』は『バイオハザード』シリーズの30周年というタイミングでリリースされ、初期の舞台であるラクーンシティも登場しました。本作はナンバリングシリーズの総括のような思いはあったのでしょうか。

熊澤:『レクイエム』というタイトルは、レオンがバイオテロに立ち向かってきたことへのレクイエム(鎮魂歌)であり、過去のラクーン事件へのレクイエム……など、さまざまな意味があります。ですが、シリーズとして区切りといった大きな意味はないというのが正直なところです。むしろ、本作に登場しなかったキャラクターの物語など、まだまだやりたいことはたくさんあります。
 もちろん30周年というすごく良いタイミングでリリースできたというのは嬉しいことだったんですが、当初から30周年記念の作品として開発を進めていたわけではなく、開発進捗も考慮した結果の発売タイミングがたまたま30周年と近いタイミングになりました。30周年というタイミングでの発売も、ファンの思い入れが強い「ラクーン事件」をあらためて扱うことも、開発チームとしてはプレッシャーのほうが大きかったですが、皆様の期待に応えられていたら嬉しいなと思います。

宇内:ストーリーとしても、バイオテロを食い止めるような大きな展開を迎えましたね。

熊澤:今後のシリーズ展開で決まっていることとしては、まずは『レクイエム』の追加ストーリーをお待ちいただければと思います。ユーザーのみなさんが遊びたいと思っているものをこれからも模索していきたいと思いますので、引き続き『バイオハザード』シリーズを応援いただけると嬉しいです。

 

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【プロフィール】
宇内梨沙(うないりさ)
ポップカルチャーを心から愛する元アナウンサー。2015年、TBSテレビに入社。アナウンサーとして多数の番組を担当する一方、ラジオやYouTubeなどでゲーム偏愛を披露。2025年にTBSを退社し、現在は『Twitch』でゲーム配信者として活動中。

 

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