1985年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始された、車田正美氏による不朽の名作『聖闘士星矢』。本作はギリシア神話をモチーフとしたバトル漫画であり、主人公・ペガサス星矢をはじめとする聖闘士(セイント)たちが、女神アテナや地上の人々を守るべく死闘を繰り広げる物語だ。
その物語の鍵を握る重要人物が、アテナの化身である城戸沙織である。物語の中盤以降、彼女は慈愛に満ちた女神として聖闘士たちを導く存在となるが、序盤の姿はそれとは大きくかけ離れたものだった。
まだ女神アテナとして覚醒する前の沙織は、星矢が強く反発するほどの傲慢なお嬢様であり、現代の価値観から見ると驚いてしまうような行動を繰り返していたのだ。今回は、物語序盤に登場する沙織の“とんでもない激ヤバ行動”を振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■「馬になりなさい」孤児の邪武を四つん這いにさせて乗り回した女王のような振る舞い
幼少期の沙織の気性の激しさを象徴するエピソードといえば、城戸家に引き取られた孤児たちに対する非道な振る舞いだろう。
祖父・城戸光政の庇護下にあるにもかかわらず、幼い沙織は彼らに「だれか馬になりなさい!!」と理不尽な命令を下す。星矢を名指しして、反発されると沙織は激怒。手に持った鞭で星矢を流血するまで打ったのである。
しかし、反発する星矢とは対照的に、自ら名乗り出て馬になった少年がいる。それが、のちのユニコーンの邪武だ。四つん這いになった邪武の背中に乗った沙織は、手に持った鞭を振るいながら「ウフフフフフーッ」と笑い声をあげてご満悦の様子。その姿は、幼いながらも冷酷な女王そのものである。
その後、膝と手を血だらけにした邪武は人知れず涙するのだが、聖闘士として成長した後も沙織に絶対的な忠誠を誓い続ける。彼が沙織を盲目的に崇拝する理由は、彼女が持つ女神としての特別なカリスマ性があったのかもしれない。
それにしても、ズボンが破れるほど邪武を這わせて鞭をふるう行為は、周囲が唖然とするほどの過激な行動であったといえよう。
■自己顕示欲の表れか? 「銀河戦争」で見せたド派手な自己演出
のちに女神アテナとして活躍する沙織は、どのような状況でも動じず、冷静に聖闘士たちを導くクールビューティーそのものだ。しかし物語序盤では、華やかな衣装や演出で注目を集めたいという願望が見え隠れするシーンもあった。
14歳になった沙織は、祖父の遺志を継いで黄金聖衣(ゴールドクロス)を賭けたバトル大会「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)」を開催する。そのバトルのために10万人を収容する巨大なグラード・コロッセオを建設し、マスコミを集めて全世界にその様子を中継させた。
特筆すべきは、そのド派手な演出だ。大会の開会式ではコロッセオのドームが閉じられ、天井に映し出された宇宙空間の銀河の上を渡ってくるように沙織が登場する。
ノースリーブの優雅なロングドレスをまとった彼女の姿に、観客からは「すてきィ まるでどこかよその星のお姫さまのようだわーー!!」と、感嘆の声があがる。
さらに沙織は、手に持った黄金の杖の先から流星の玉を放ち、そこに記されたアルファベットでトーナメントの対戦者を決めるという大がかりなイリュージョンまで披露した。
この壮大で凝った演出からは、注目を浴びたいという沙織の隠しきれない自己顕示欲がうかがえる。この見る者を惹きつける天性の自己演出力も、ある意味彼女の魅力ではないだろうか。


