■マシンガントークと強烈なテンションから生まれる「野沢節」
深夜ラジオ『パックインミュージック』では明るい素顔が垣間見えましたが、その軽妙なテンションを活かしたコミカルな役どころも野沢さんの魅力です。
その原点ともいえるのが、テレビアニメ『チキチキマシン猛レース』(日本では1970年放送)の実況ナレーター役ではないでしょうか。
一分の隙もないマシンガントークは、もはや「滑舌の芸術」と呼べる域。OPから11台分のドライバーを紹介し、本編が始まると同時に、レース実況をずーっとしゃべりっぱなし。この早口でまくし立てるスタイルは、後に多くの声優の手本となり、野沢さんの代名詞の1つとなりました。
そして、劇場映画『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993年公開)のハイグレ魔王役は、野沢さんの演技の振り幅を語る上で欠かせない“クセ強キャラ"です。
映画の中盤から登場するハイグレ魔王は、妙に色っぽいオネエ言葉が特徴。アラン・ドロンの吹き替えやフェルゼンを演じた、あのテノールの美声で「ホホホホホホホッ……地球人よ、早くアタシ達のハイグレ銃を浴びて、ハイグレにおなりなさい」と叫ぶ場面は、凄まじい破壊力がありました。
本来なら二枚目キャラにこだわっても不思議はない大御所が、全力で強烈なオネエキャラを演じきる姿勢に、筆者は野沢那智という役者の底知れない深みを感じたのです。
数多くの名演でファンを喜ばせてくれた野沢那智さんですが、2010年10月30日、肺がんのため72歳で逝去されました。
甘いテノールで多くのファンを魅了し、ある時は宇宙を駆ける海賊として不敵な笑み浮かべ、またある時はオネエ口調の魔王として高笑い……。その芸域の幅の広さは随一だった役者といえるでしょう。
野沢那智さんが演じられた中で、皆さんがもっとも印象に残っている役柄は何でしょうか。
■野沢那智の演技とともに酔いしれた『スペースコブラ』の名曲



