レジェンド声優・野沢那智、昭和オタク女子を魅了した「驚異の振り幅」 C-3POにコブラ、ハイグレ魔王まで…【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
CD「スペースコブラ オリジナル・サウンドトラック」(日本コロムビア)

 毎年5月4日は『スター・ウォーズ』の名フレーズ「フォースと共にあらんことを(May the Force be with you)」の“May the Force”と、5月4日を意味する“May the Fourth”をかけて、「スター・ウォーズの日」と呼ばれている。

 そんな『スター・ウォーズ』の旧三部作で「C-3PO」の日本語吹き替えを担当したのが、名優・野沢那智さん。野沢さんは、昭和の日本で絶大な人気を誇った二枚目俳優アラン・ドロンの吹き替えなども担当していました。

 声優やナレーターのみならず、俳優、演出家、劇団主宰者など数々の肩書を持っていた野沢さん。1970年前後のラジオリスナーでしたら、白石冬美さんとパーソナリティを担当していた深夜ラジオ『パックインミュージック』(TBSラジオ)での軽妙なトークに大笑いし、翌日寝不足で学校や会社に行った経験がある人もいるのではないでしょうか。

 そんな野沢さんの声質は、アラン・ドロン役で耳にした甘く色気のあるテノールが印象的。しかし『ゴッドファーザー』でアル・パチーノが演じたマフィアのボス役のような渋い役どころから、『スター・ウォーズ』のC-3POのようなコミカルな役まで、素晴らしい演技力で幅広いキャラクターに挑んだ名役者でした。

 そこで今回は野沢那智さんが「アニメ作品」で披露した、驚くべき演技の振り幅について振り返ってみたいと思います。

■貴公子、指導者、御曹司…正統派テノールが生み出す「気品と情熱の王道二枚目」

 野沢さんの美しいテノールから生まれるのが、気品と情熱を併せ持つ「二枚目キャラクター」です。個人的には、特に“張り”のある声色が印象的でした。

 アニメ『ベルサイユのばら』(1979年放送)に登場するフェルゼン(ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン)は、筆者が野沢さんの声に魅了されるきっかけとなったキャラクターです。ちなみに、序盤の第6~8話だけ野沢さん急病のため、堀勝之祐さんが代役を務めました。

 第11話で野沢さんが復帰するも、その回のタイトルは「フェルゼン北国へ去る」で、第18話までお別れ。さらに第20話「フェルゼン名残りの輪舞」でも再びお別れすることに。

 そして再々登場となった第25話「かた恋のメヌエット」の回では、野沢さんの圧巻の演技が堪能できます。

 冒頭、アメリカ独立戦争から数年ぶりに戻ったフェルゼンが、友人オスカルと再会するシーンを、野沢さんは豪快かつ朗らかに演じます。それまでのフェルゼンは貴公子然とした人物でしたが、過酷な戦場を経験。それに伴い、以前とは少し違う大きく張りのある声の演技によって、ワイルドさが増した様子が克明に伝わってきました。

 その他にも王家の状況を知らされた時の苦悩する様子、アントワネットの前で見せる騎士のような忠誠心、そして素性を隠してドレス姿で現れたオスカルへの優しいささやき……。

 野沢さん演じるフェルゼンの魅力と普段とのギャップに、思春期を迎えたばかりの筆者の感情はジェットコースターのように激しく揺さぶられました。

 また『新・エースをねらえ!』(1978年放送)の宗方仁役の野沢さんの演技も魅力的でした。テニスの鬼コーチという設定は、野沢さんならではの張りのある声とマッチ。主人公・岡ひろみを容赦なく叱る一方で、時折甘いテノールで頼れる大人の雰囲気を醸し出し、厳しさと愛が同居する宗方に視聴者として魅了されます。

 その78年版の最終回では、病床の宗方が渡米するひろみを安心させようと、優しく気丈に振る舞います。そのシーンがあったからこそ、宗方が最期に遺した「岡、エースをねらえ」のセリフに、誰もが涙したのです。

 OVA『エースをねらえ!2』(1988年)からは回想シーンの登場となりますが、野沢さんの鬼気迫る演技によって、病魔に苦しみながらも全身全霊でひろみを育てたことがひしひしと伝わってきました。

 『ガラスの仮面』(1984年放送)の速水真澄役では、冷徹なビジネスマンとしての低く抑えた口調と、マヤへの想いがあふれ出した際のつややかなテノールの使い分けが見事。立場と恋心のはざまで揺れ動く、彼の二面性が表現されていました。

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