昭和の「女性オタク」が心奪われた…漫画家・新谷かおるが世に送り出した「美形キャラ」と「美メカ」の魅惑 『ファントム無頼』『エリア88』を生んだ巨匠【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
新谷かおる・著 Kindle『エリア88 2』(グループ・ゼロ)

 4月26日は、漫画家の新谷かおる先生の誕生日です。東京・池袋の新文芸坐では、今年75歳となる新谷先生の生誕を記念して、劇場版とOVA版『エリア88』が上映。先生自身もトークステージに登壇するイベントが開催されます。

 そんな漫画家・新谷かおる先生は、1970年代から80年代にかけて凄まじい人気を誇りました。特に1981年からの約3年間は、『ファントム無頼』『エリア88』『ふたり鷹』『QUEEN1313』の4作品を同時連載。

 さらにロボットアニメ『宇宙大帝ゴッドシグマ』(1980年)のキャラクター原案を担当。『ふたり鷹』のテレビアニメ化(1984年)、『エリア88』のOVA化(1985年)と自作品の映像化も続きます。

 読者からの人気も絶大で、雑誌『ファンロード 1982年7月号』(ラポート)では、「シュミ特(シュミの特集)」と呼ばれるメイン投稿コーナーにて『エリア88』が特集。

 さらに少女漫画やBLなどを扱う“女性向け”漫画情報雑誌『ぱふ』(雑草社)では、二度(1982年5月号・1984年7月号)も「新谷かおる特集」が組まれるほど、当時の女性ファンは新谷作品に注目していたのです。

 そこで今回は、80年代に大勢の女性ファンを魅了し、当時は小学生だった筆者も夢中になった新谷かおる先生の作品について振り返ってみたいと思います。

■いかにして新谷作品と出会ったのか

 1970年代後半、松本零士先生が『宇宙戦艦ヤマト』で一大ブームを巻き起こします。

 松本先生の描くメカは造形が素晴らしく、宇宙船やコックピット内部の計器類まで詳細に描写され、いわゆる「松本メーター」は斬新そのもの。ドラマチックな物語も秀逸で、作品を彩る謎めいた美女たちに、当時幼かった筆者も魅了されます。

 その頃、松本先生が手がけた『戦場まんがシリーズ』を目にしますが、なじみのあるアニメの雰囲気とは違ったハードな内容が怖くて完読できませんでした。

 それから数年後、松本先生の雰囲気に似ていると思って手に取ったのが、新谷かおる先生の『戦場ロマン・シリーズ』(1977年/秋田書店)です。当時は新谷先生が松本先生の元アシスタントで、『キャプテンハーロック』に登場するヤッタラン副長のモデルだったとは知りませんでした。

 そして『戦場ロマン』に出てくる女性キャラに奇妙なデジャブを感じていたのですが、愛読していた少女漫画誌『りぼん』の『ハロー!マリアン』(1978年/集英社)の作者・佐伯かよのさんが新谷先生と結婚されていることを後から知り、互いの作品にメカや女性キャラを描いていたということで合点がいきました。

 当時、私の周囲では、メカや戦争が絡むSF作品のことを女性読者が堂々と「好き」と言いにくい空気がうっすらありました。しかし、その間口を最初に広げてくれたのが松本零士先生や新谷かおる先生だったのです。

 その頃、夢中になった新谷作品が『週刊少年サンデー増刊号』(小学館)に掲載された『ファントム無頼』(原作・史村翔氏)でした。

 『ファントム無頼』は航空自衛隊百里基地を舞台に、「F-4EJ(※アメリカのF-4ファントムを日本仕様にした機体)部隊」に所属するパイロット・神田鉄雄とナビゲーター・栗原宏美(ひろよし)コンビの活躍を描いた物語。

 原作を担当された史村翔先生は、『北斗の拳』(1983年)の原作者・武論尊先生の別名義で、元航空自衛官という経歴を持つ方です。

 昭和女子にはなじみの薄かった「F-4」や「ファントム」といった単語が新鮮に映り、日本の空を守る空自のシビアな世界観を基本コメディタッチで描いた本作にのめり込んだのです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4