主人公・幕之内一歩の引退という衝撃的な展開から久しい『はじめの一歩』(森川ジョージ氏)。その後の一歩は鴨川ジムのトレーナーとして第2のボクシング人生を歩んでいるが、ほかのライバルたちの“その後”をあなたはご存知だろうか。
一歩という有望株を失った日本ボクシング界は、新たな局面を迎えた。かつて一歩としのぎを削ったライバルたちが物語の中心となり、最近の『はじめの一歩』は「ライバル編」といっていいほど、彼らが主役のように躍動している。
今、一歩のライバルたちはどこへ向かい、誰と戦っているのだろうか。今回は、一歩の引退後に動き出したライバルたちの「現在」を追いかけてみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■世界王者のヴォルグに挑戦中の千堂! 世界の舞台で躍動するライバル
一歩の引退後、ライバルたちの多くは日本を飛び出し、世界の舞台へと活躍の場を移している。その筆頭として、かつて一歩と激闘を繰り広げたヴォルグ・ザンギエフから見ていこう。
A級ボクサー賞金トーナメントで一歩と戦ったヴォルグは、一歩の引退前にIBF世界J(ジュニア)・ライト級タイトルマッチに勝利し、世界王者の座を手にしている。不遇な運命に翻弄され、苦しんできたヴォルグが栄光をつかんだ瞬間は、多くの読者に感動を与えた。
一歩の引退後もヴォルグは世界王者を防衛し続けており、脇腹の故障を抱えながらも1ラウンドKOによる王座防衛を成し遂げている。その実力は、数多くいる一歩のライバルたちの中でも屈指のものだろう。
また、一歩のライバル筆頭格として人気の千堂武士も、世界に羽ばたいている。一歩の世界挑戦を阻んだ強豪、“死神(ミキストリ)”ことアルフレド・ゴンザレスを制し、ついに絶対王者リカルド・マルチネスを相手に世界タイトルマッチに挑戦中だ。(2026年3月時点)
総合的なボクシング技術ではリカルドに及ぶべくもないが、千堂には何をしでかすか分からない野生の勘と、一発で終わらせる強打がある。ネタバレになるので詳しい試合展開は伏せておくが、千堂につい期待したくなる試合であることだけは伝えておきたい。
ちなみに、千堂と対戦するリカルドは、一歩の引退前から変わらず世界フェザー級ボクサーの絶対王者として君臨している。それでも、千堂や後述するウォーリーとの戦いでは今までにない一面を見せており、かつて伊達英二を圧倒した頃と比べると、その「絶対」が少しずつ揺らいでいるように思える。
■間柴やウォーリーは世界戦で惜しくも敗北
勝者がいれば敗者もいるのがボクシングの世界だ。世界の頂点に挑戦したライバルたちの中には、志半ばで夢破れた者もいる。
東日本新人王決定戦で一歩と戦った間柴了もその1人だ。一歩の引退後も間柴は着実に勝利を積み重ね、念願であったWBC世界ライト級タイトルマッチにたどり着く。
現王者のマーカス・ロザリオのサウスポーからのインファイトに苦戦を強いられながらも、かつて不良時代の自分を支えてくれた周囲の人々への感謝を胸に、ロザリオと互角以上のボクシングを繰り広げる間柴。一歩と戦った頃、勝利のためなら反則もいとわなかったかつての姿からは想像もつかない、精神的な成長が感じられる試合だった。
しかし、勝負の世界は非情だ。第1481話、とどめの一撃を打ち込む寸前に間柴の意識は途切れ、タイトルマッチは敗北で幕を閉じる。間柴は病院に運ばれたが意識は戻っておらず、その安否は現在も明かされていない。
かつて一歩を敗北寸前まで追い詰めた野生児ボクサー、ウォーリーもまた、世界の壁に涙をのんだ。
あのリカルドとのタイトルマッチに挑み、その自由奔放な動きと目を狙う戦術で一時は王者を翻弄する。だが、基本を極めたリカルドのボクシングには及ばず、最後は千堂に後を託すかのように放った「スマッシュ」を迎撃されて敗北。試合後、ウォーリー本人は試合を通してボクシングを楽しめたと語り、プロの世界から身を引いた。
これらの敗北は残念だが、彼らがリング上で見せた勇姿は読者に、そして作中のキャラクターたちの胸に刻まれている。引退した一歩は、ライバルの戦いとその結末に何を思うのだろうか。


