■成田凌演じるゆきおの「追い打ち」の表情
しかも素晴らしいのは、このセリフを「カッコよく」言わないことだ。多くの俳優なら、ここで少し声を低くして、クールに決めようとするだろう。だが成田凌は違う。わざと少し鼻にかかったような、だるくて、ちょっと子供っぽい響きを残している。「マジでど~~~でもいい」の伸ばし方は、まるで高校生が友達に愚痴をこぼしているような軽さがある。その軽さが逆に、ゆきおの深い絶望と愛情の深さを浮かび上がらせる。
文菜が「ひど……」と言うと、ゆきおはさらに追い打ちをかける。
「すぐにできるよ好きな人。明日には他の男と寝てるよ」
ここでも成田凌の表情が秀逸だった。口では残酷なことを言っているのに、目が少しだけ寂しそうに細められている。あの微妙な目の動き。怒りではなく、哀れみでもなく、「もうどうしようもないな、お前も俺も」という、二人を俯瞰したような視線。あれは本当に、成田凌にしか出せない味。今すぐ成田凌の演技の味のスープでラーメンを食べたい。
このドラマを通じて、成田凌は「不器用な優しさ」を体現し続けてきた。ゆきおは決して聖人君子ではない。むしろ自分勝手で、嫉妬深くて、ときには意地悪だ。でもその底に、誰よりも文菜のことを理解しようとしている優しさがある。成田凌はその優しさを、決して「優しい演技」で表現しない。いつも少し棘を残し、皮肉を交え、ときに冷たく突き放すことで、逆にその優しさの純度を高めている。
最終回のこのシーンで、ゆきおはすべてのトゲを一度に落としたような気がした。いや、落としたのではなく、「トゲがあることすらどうでもよくなった」のかもしれない。その境地に到達したゆきおを、成田凌は静かに、でも圧倒的な存在感で演じきった。
正直、このシーンだけで成田凌の2020年代の代表的な演技の一つに数えてもいい。
この最終回の「知らね~。マジでど~~~でもいい」は、ただの投げやりなセリフではない。これはゆきおが、文菜に対して、そして自分自身に対して、最後に与えた「解放」。好きとか嫌いとか、裏切りとか愛情とか、全部どうでもいい。生きてるだけで十分だよ、という、究極の肯定。
成田凌はその肯定を、軽やかで、ちょっと不真面目で、それでいて胸の奥が熱くなるような温度で完璧に体現した。
ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』は、いろいろと物議を醸した作品だったかもしれない。文菜の自己中心性にイライラする視聴者も多かっただろう。だが、最終回で成田凌が放ったこの一撃で、すべてが「冬のなんかさ、春のなんかね」みたいな、全てが空に帰った。
マジでどうでもいいけど、どうでもよくない。そんな不思議なドラマだった。
■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。


