魔法少女なのに変身しない…!? 異色作『魔法のアイドルパステルユーミ』が描いた「リアルかわいい」等身大ヒロインの画像
『魔法のアイドル パステルユーミ』 (C)ぴえろ

 「ぴえろ魔法少女シリーズ」待望の最新作となるアニメ『魔法の姉妹ルルットリリィ』が、2026年4月5日よりスタート。この新作アニメは、1983年に社会現象を巻き起こした『魔法の天使クリィミーマミ』から始まり、昭和から平成、そして令和へと受け継がれてきた人気シリーズの第6作目にあたります。

 これまでの「ぴえろ魔法少女シリーズ」では思春期の少女が魔法を授かり、困難を乗り越えながら成長していく様が描かれています。そして最大の目玉は、子どもから大人へと姿を変える「変身シーン」でした。

 魔法の力で華々しい世界で活躍する一方で、「本当の自分」と「魔法が作り上げた虚構の自分」のはざまで揺れ動く乙女心や二重生活がもたらす葛藤も見どころのひとつ。視聴者だけが、主人公の秘密を共有しているという構造で、多くのファンをとりこにします。

 ところが、これまでのシリーズが積み重ねてきた「大前提」をあえてなくし、魔法少女の新たな可能性を模索した意欲作が、1986年に放送されたシリーズ第4作目『魔法のアイドルパステルユーミ』でした。

 いかに『パステルユーミ』が同シリーズの中で異色だったのか、その内容や背景についてを振り返ってみたいと思います。

※本記事には、作品の核心部分の内容も含みます。

■シリーズ唯一「変身しないヒロイン」 従来の魔法少女モノへの原点回帰!?

小学生らしからぬ画力を誇るユーミ (C)ぴえろ

 これまでのシリーズ3作品が「魔法で憧れの大人に変身し、夢をかなえる」物語だったのに対し、『パステルユーミ』では終始子どもの姿のままです。

 主人公の花園ユーミは、絵を描くことが大好きな女の子。花屋の一人娘である彼女は、ある日、花の妖精・かき丸とケシ丸から魔法のペンダントとステッキを授かります。そのステッキで空間に描いた絵は、どんなものも本物になって実体化。こうしてユーミは、魔法に彩られたスリルと冒険に満ちた日常を送ることになるのです。

 これまでのシリーズ最大の特徴でもあった「大人への変身」という要素をあえて捨て、子どもの姿のまま困難に立ち向かう明るい展開は、『クリィミーマミ』以前の魔法少女アニメへの原点回帰のようにも見えました。

 そしてユーミが使う魔法には「一度描いたものは二度と実体化できない」「一度に1つしか出せない」「時間が経過すると消える(※例外あり)」といった明確なルールが存在します。

 すべてを魔法の力で解決するのではなく、「ユーミの描く力」や「発想力」が試される設定で、単なるメルヘンチックなストーリーにとどまらない面白さがありました。

 実際、劇中でユーミがサラサラと描き出す絵は、彼女の年齢からは想像できないほど達者なものです。将来は漫画家志望で花を愛する彼女にとって、「花の国の妖精」から授かった「描く魔法」は抜群の相性の良さだったのです。

 ちなみに同作のタイトルには「魔法のアイドル」という文字が入っています。これまでのシリーズのように変身したり、アイドル活動をしたりするわけではないので不思議ですが、同作を見ているうちに筆者はある考えに至りました。

 絵を描くのが上手なユーミは、近所の子どもたちの憧れの的です。つまり彼女は芸能界のスターではなく、身近な人々から広く愛される「アイドル」だったのではないでしょうか。

■時代の流行を採用…!? 若きクリエイターが生み出した「等身大」ヒロイン

 本作の監督は『ななこSOS』でチーフディレクターを務めた鴫野彰さん。キャラクターデザインは、当時21歳の洞沢由美子さんと『マジカルエミ』のキャラデザも務めた本山浩司さんの2名がクレジットされています。

 これまでのシリーズのイメージを一新し、より丸みを帯びた愛らしいキャラクターデザインで「子どもらしさ」があふれるユーミの魅力を引き出しました。

 歴代シリーズのヒロインと比較しても、ユーミの外見は幼さが強調されています。大きなリボンに三つ編み、フリルたっぷりのミニスカートがトレードマークで、まさに「等身大のヒロイン」といった愛らしいキャラクターです。

 アニメが放送された1986年当時、大人びた「ボディコン」がブームになるのと同時期に、「ミニスカート」や「リボン」といったキュートな服装も流行していました。

 『パステルユーミ』ではあえて大人の姿に変身せず、子どものままのかわいさを押し出した背景には、そういった時代の空気感もあったのかもしれません。

 そして、こういった「時代のリアル」は、アニメ内の家族像にも反映されています。

 ユーミの両親はふだんこそ仲が良いものの、全25話の間に2度も夫婦ゲンカが描かれたエピソードが存在します。お父さんが家出をしたり、互いに浮気っぽい真似をしたりと、見ているこちらがハラハラするような展開もありました。

 親とはいえ年若い夫婦のため、感情的になって未熟な面を見せてしまうあたり、型にはまったよくある両親像ではなく、等身大のキャラクターとして丁寧に描かれているように見えました。こうした生々しくも思えるリアルな描写は、過去のシリーズと比べても極めて挑戦的に感じた部分です。

大きなリボンにふわふわのミニスカがおしゃれだった! (C)ぴえろ
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