空知英秋氏による『銀魂』(集英社)の「吉原炎上篇」を原作とする『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』が、2月13日の公開以来大きな話題を呼んでいる。昨年にはスピンオフ作品『3年Z組銀八先生』のアニメ放送もされており、原作の連載終了後も『銀魂』ワールドはいまだにファンを楽しませてくれている。
そんな中、空知氏のデビュー作である読み切り作品『だんでらいおん』を原作としたオリジナルのシリーズアニメが、Netflixにて4月から配信されることになった。長年のファンにとっては嬉しいサプライズだ。
本作以外にも、空知氏の読み切り作品はいくつかあり、どれも『銀魂』に通ずる世界観や作風を感じさせる。今回はその魅力と見どころに迫りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■笑えて泣ける人間ドラマ『だんでらいおん』
まず紹介するのは、今回アニメ化が発表された『だんでらいおん』。さまよえる霊魂を成仏させる「天使」の奔走を描く、笑えて泣けるヒューマンドラマで、『銀魂』コミックス第1巻に収録されている。
物語は、主人公の丹波鉄男と黒鉄美咲が、中山春吉という地縛霊を自転車で追いかける場面から幕を開ける。必死の形相で自転車を漕ぐ鉄男はスーツ姿かつ柄が悪く、天使という言葉は全然似合わない。しかも成仏させるためには「魂魄廻禁銃(通称:魂禁)」と呼ばれる拳銃を使用しており、どちらかというと死神のようだ。
春吉は妻と喧嘩したまま死んだことを後悔しており、成仏させられる前にちゃんと謝りたいと懇願する。事情を聞いた美咲は彼に同情し、鉄男とともに夫婦の仲直りを手伝うことに……。
と、あらすじだけ見れば単に「いい話」に思えるが、その過程で喧嘩の理由が実にくだらないことだと判明したり、妻の中になぜか謎のパンチパーマ男の霊が入っていたりと、コミカルなドタバタ劇が繰り広げられていく。
真顔でボケる美咲とそれにキレツッコミを入れる鉄男の姿は、『銀魂』のギャグパートを彷彿とさせる。さらに、途中はふざけ倒しながらも感動的なラストにたどり着く点も、両作品の共通点だ。デビュー作の時点で、空知氏の作風は確立されていたといえるだろう。
■“銀さん”の原型がここに?『しろくろ』
『銀魂』コミックス第2巻収録の『しろくろ』は、女子高生・坂田とみ子のもとに謎の魔人・山本五郎左衛門(通称山さん)が現れるところから始まる。
とみ子は親から受け継いだ霊能力を使って、「呪い屋」というとんでもない仕事をバイト感覚でやっていた。光と闇の調和のため尽力しているという山さんは、彼女の危険な行為を止めるため、勝手に坂田家に居候し彼女の邪魔をし始める。
山さんはクセのある銀髪といい、着流し姿といい、ビジュアルは『銀魂』の主人公・坂田銀時(通称銀さん)そっくりだ。飄々としているが暗い過去の持ち主だったり、真顔でボケ倒したり……と性格にも共通点が多く、『銀魂』への影響が色濃く感じられる作品である。
とみ子とその父、山さんの3人が繰り広げるボケとツッコミの応酬はテンポがよく、読んでいてくすりとさせられてしまう。一方、終盤で描かれる戦いはかなりシリアス要素が強く、前半とのギャップも相まってぐっと引き込まれる。
何より山さんが魅力的に描かれており、いろいろと掘り下げ甲斐がありそうなところがファンを惹きつける理由のひとつだろう。連載化を期待する声もあった本作、『銀魂』ファンで未読の人はぜひチェックしてみてほしい。


