■絶対にくっつくと思っていたのにまさかの海外留学『ルナティック雑技団』

 岡田あーみん氏による『ルナティック雑技団』は、1993年から1995年にかけて『りぼん』で連載されたギャグ漫画である。平凡な中学生・星野夢実が、“孤高の貴公子”と称される学校のアイドル的存在・天湖森夜の家に居候することから物語は始まる。

 作者の岡田氏といえば、『お父さんは心配症』や『こいつら100%伝説』といった、少女漫画の常識を覆す破天荒なギャグ漫画で知られる伝説の漫画家だ。

 本作でも、森夜を溺愛する母・ゆり子の常軌を逸した奇行や、ライバルである愛咲ルイの奇想天外な行動など、カオスなギャグが満載で読者を爆笑の渦に巻き込んだ。

 しかし、そんな中でも夢実と森夜が想いを通わせる甘酸っぱい胸キュンシーンも描かれ、修学旅行でのハプニングキスを経て、なんだかんだで最後はハッピーエンドを迎えるものだと誰もが信じていた。

 だが、物語は読者の予想を裏切る結末を迎える。物語終盤、夢実は海外にいる両親から同行を求められ、熟考の末、自立の道を選んで海外へ旅立ってしまうのだ。

 さらに、その後に描かれた番外編「今夜だけヒロイン」や「お嬢さまのパーティー教室」では夢実の出番はほとんどなく、代わりに同じく森夜を想い続けてきた令嬢・成金薫子がメインキャラクターとして物語は展開される。

 爆笑ギャグ漫画のラストで突如突きつけられた、ヒロインとヒーローの“別離”という切ない結末。一応、2一は遠距離恋愛のような形で手紙のやり取りはしているものの、夢実が選んだ自立というリアルな選択は、当時の読者に大きな衝撃を与えた。

 こうした強烈なギャグの中にふと見せる人間ドラマこそが、本作を唯一無二の名作にしている要因の1つだろう。

 

 コミカルな作風で読者を油断させておきながら、突然シリアスなテーマや衝撃的な展開を投げかける少女漫画の数々。あまりのギャップに、当時は多くの読者が驚かされたことだろう。

 笑いだけでなく、感動やハラハラする展開をも与えてくれたこれらの名作を、大人になった今、改めて読み返してみてはいかがだろうか。

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