ここまで来たのになぜ? “鬼子”と呼ばれた少年時代、あまりに悲しき過去…『鬼滅の刃』自ら死を選んだ「猗窩座の真の思惑」の画像
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (c)吾峠呼世晴/集英社 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 歴史に名を残すヒット作となった『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴氏)。そのクライマックスへと続く『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、タイトルにあるように炎柱・煉獄杏寿郎との死闘も記憶に新しい上弦の参・猗窩座との再戦が描かれている。

 主人公・竈門炭治郎と水柱・冨岡義勇は猗窩座と激戦を繰り広げるも、その圧倒的な強さに苦戦を強いられる。満身創痍の2人を前に、頸を斬られてもなお再生しようとする猗窩座の姿に誰もが絶望する。

 しかし、猗窩座はかつて愛した人の幻影を見たことで、その心境は劇的に変化する。結果として彼は、炭治郎への感謝とともに自ら消滅する道を選んだ。

 このあまりにも悲しい幕引きの裏には、どのような思惑があったのだろうか。彼の人となりと共に、その深淵を改めて深掘りしてみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

 

■無惨のお気に入り…上弦の参・猗窩座とは

 上弦の参の猗窩座は、「十二鬼月」の中でも屈指の実力者である。その真面目で忠実な性格から、鬼の始祖・鬼舞辻無惨のお気に入りとされている。

 猗窩座は純粋な強さを求めることに執着しており、弱者に対しては容赦のない態度を見せる。一方で、強者への敬意を払う武道家としての一面も持ち合わせており、炎柱・杏寿郎と戦った際には、彼の強さを称賛し、鬼になるよう勧誘したほどである。

 無我の境地である“至高の領域”を目指す猗窩座は、自分より格上の上弦の鬼を倒すことにも意欲的だった。特に上弦の弍・童磨に対しては嫌悪感を隠さず、挑発に乗って頭部を吹き飛ばしたこともある。

 強さが全てである鬼の世界では、実力による確執もあったのだろう。童磨が自分より後から鬼になったにもかかわらず階級が上であることや、猗窩座が絶対に喰わない女性を好んで捕食することなど、彼が童磨を目の敵にする理由はいくつか考えられる。

 絶対的な強者である上弦の壱・黒死牟には、位列を賭けた「入れ替わりの血戦」を挑んだ過去もあるが、敗北している。それ以降、猗窩座は黒死牟を倒すべく鍛錬に励んでいた。

 公式ファンブックによれば、無惨同様、黒死牟もまた猗窩座を気に入っており、血戦の申し入れを嬉しく思っていたという。血戦の敗者は捕食されることが多いなか、黒死牟は猗窩座を食べずに生かし、彼がさらに強くなることを楽しみにしていたことが明かされている。

■悲劇の人間時代…父のために盗みを繰り返す

 猗窩座は人間時代から、過酷な運命にあった。狛治という名の少年だった彼は、病弱な父親と2人で暮らしていた。幼い頃から父親の薬代を稼ぐために盗みを繰り返し、その腕には罪人の証である入れ墨が刻まれていた。だが、父親を助けたい一心であった狛治にとって、それは取るに足らないことだった。

 狛治を捕らえた奉行所の役人は、彼の腕っぷしの強さや凶暴性も問題視しており、わずか11歳の狛治を「鬼子」と称したこともあった。

 しかし、息子が罪を重ねることに責任を感じた父親が自死を選んだことで、狛治の人生は大きく変わってしまう。“父親のため”とどんな辛い運命も耐えてきた狛治だが、その支えを失った彼は世間に対する恨みを募らせ、自暴自棄になってしまうのだ。

 駆けつけた素流道場の師範・慶蔵に制止されるまで、大人相手に暴れ回っていた狛治。彼は慶蔵に敗北したのち、慶蔵に拾われ、道場で生活をすることになる。

 そこで狛治は体の弱い慶蔵の娘・恋雪の看病を任された。父親の看病に慣れていた狛治は献身的に恋雪を支えた。そして、狛治が18歳、恋雪が16歳になる頃には彼女の病状は良くなっており、共に家事を行えるほどには回復していた。 

 慶蔵は、狛治に恋雪と結婚し、道場を継いで欲しいと告げる。真っ当な人生を諦めていた狛治だったが、2人との出会いで幸せな未来を思い描き始めていた。だが、そんな矢先に悲劇が訪れるのである。 

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