2026年3月19日に阪神甲子園球場で開幕する、第98回選抜高等学校野球大会(センバツ)では、数多くの熱戦が期待される。プロ野球界でも侍ジャパンが熱戦を繰り広げ、NPBやメジャーリーグも開幕を控えるなど、本格的な野球シーズンが到来する。
さて、野球において先頭バッターの出塁は得点の大きなチャンスにつながりやすい。打順の先頭に立ち、最も多く打席が回ってくる1番打者は「リードオフマン」と呼ばれ、チームの起爆剤となる重要な役割を担うことが多いものだ。
そこで今回は、数ある高校野球漫画の中から「最強のリードオフマン」と呼ぶにふさわしい選手たちを紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■規格外のパワーで相手を圧倒する『ドカベン』岩鬼正美
まずは、水島新司さんの名作『ドカベン』から、明訓高校野球部の岩鬼正美を挙げたい。
トレードマークともいえる葉っぱを口にくわえ、学帽を目深にかぶった岩鬼。恵まれたその巨体から放たれる打球は、凄まじい轟音を響かせてスタンドに突き刺す桁外れのパワーを誇る。
岩鬼の後ろには、殿馬一人や山田太郎、微笑三太郎といった好打者・強打者が控える明訓高校において、長打力のある岩鬼をトップバッターに迎えるのは相手投手にとって大きなプレッシャーとなるだろう。
そんな岩鬼の代名詞といえば「悪球打ち」である。ストライクコースから外れたどんなボール球でも、「喝」と気合を入れて簡単に打ち返してホームランにしてしまうほどだ。
トップバッターからこれだけ迫力のある選手が登場するとなると、並の投手は萎縮してしまうもの。その長打力は、野球漫画史上最強ともいわれる山田に匹敵するレベルだ。
時に暴走することもあるが、足もそれなりに速いため、リードオフマンとしての資質は申し分ない。
とはいえ、連載当時「これほどのパワーヒッターがなぜ1番打者なのか?」と疑問に思ったのは、筆者だけではないはずだ。
本来であればクリーンナップを任されてもおかしくないが、岩鬼は打線のつながりをそこまで意識できるタイプではない。そのため、出塁率の高さよりも一発長打で試合の流れを変え、打線に勢いをもたらす役割が求められたのかもしれない。
そしてプロ入り後に岩鬼自身が「1番」に対する強いこだわりを語っており、「何事も1番がいい」という彼のスタイルにリードオフマンという役割がマッチしていたのだろう。
■守備よし、足よし、度胸よしと走攻守バランスが良い『H2』木根竜太郎
あだち充さんの『H2』からは、千川高校の木根竜太郎を挙げたい。彼は、走攻守のバランスに優れたリードオフマンとして描かれている。
初登場時、木根はサッカー部に所属していたが、1年生ながらすでにレギュラークラスの実力を持っており、もともと身体能力が高いことがうかがえた。少年野球時代にはエースで4番を務めていた背景もあり、野球のセンスも抜群である。
野球部に所属してからはセンターのポジションを任され、1年時の練習試合では強豪である明和第一高校や栄京学園高校の各監督からも高評価を受けている。
そして、チームのエース・国見比呂にも、「センターの守備の上手さは明和第一にもいない」と絶賛されていた。さらに、比呂が登板しない試合には先発マウンドに上がることもあり、甲子園で完投勝利を飾るなど投手としての才能も発揮した。
とはいえ、意外にも木根がリードオフマンとして派手に活躍するシーンは多くない。これは、木根の後を打つ2番打者で、性格が正反対の真面目な柳守道の堅実な活躍が光る場面が多いことも影響しているかもしれない。
木根は運に恵まれず、いい当たりが野手の正面を突いたり、ファインプレーに阻まれてアウトになることもしばしばあった。だが、ここ一番での勝負強さがあり、明和第一との練習試合ではポテンヒットを2本放ち、2打点をマークする活躍を見せている。
比呂に匹敵するレベルの投手と対戦した2年生時の夏の甲子園では、特にその勝負強さが際立っていた。
1回戦では豪南実業高校のエース・栗丸保から、不格好ながらもイレギュラーな当たりでチーム唯一のヒットを放ち、2回戦では伊羽商業高校のエース・月形耕平から、ポテンヒットながらチーム初ヒットを放つなど、突破口を切り拓く役割を果たしている。
また、特筆すべき彼の最大の武器は、どんな好投手にも一切物怖じしないほどの度胸だろう。その大胆不敵なほどの精神力は、チームに勢いをもたらすリードオフマンにとって不可欠な要素である。
自称“天才”で、時に自己中心的かつ自意識過剰とやっかいな性格だが、人目につかないところで努力を怠らないストイックさも併せ持つ。その総合力の高さから、屈指のリードオフマンであることは間違いないといえるだろう。


