2003年よりTBS系のBSで放送されて以来、ジャパニーズホラーの真髄を世界に知らしめてきた『怪談新耳袋』。本作は日本全国から集められた実話の「怖い話」をもとにしたショートドラマであり、その生々しいリアリティで多くの視聴者を恐怖に陥れてきた。
『怪談新耳袋』の魅力は、1話わずか5分という短い時間の中にゾッとする恐怖が詰め込まれている点にあるだろう。視聴者は見るだけで非現実的な恐怖を疑似体験できるが、作品によってはその映像がトラウマになってしまうような恐怖シーンが描かれることもあった。
今回はそんな放送開始から20年以上経った『怪談新耳袋』の傑作の中から、特に戦慄した3作品の内容を紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■旅行先の古いトイレで経験した恐怖…『修学旅行』
まずは、学生時代に誰もが経験するであろう修学旅行での出来事を描いた「修学旅行」を紹介しよう。本作は『怪談新耳袋』エピソード第1シリーズ第20話に収録されている。
舞台は、とある女子高の修学旅行。主人公の少女が古い旅館のトイレで友だちたちと歯を磨いていると、背後で個室の扉が静かに開いた。しかし中には和式便器があるだけで、中には誰の姿も見当たらない。
その後、忘れ物を取りにトイレに1人で戻った主人公を再び怪異が襲う。何度閉めても、ひとりでに個室の扉が開いてしまうのだ。そして彼女が振り返った瞬間、扉の頂上部に白い手が出現。さらに扉の真ん中から白い足が這い出し、下からは血の気のない真っ白な女の顔が現れて、じっとこちらを覗くのだ。
恐怖のあまり逃げようとした主人公だが、なぜか出口のドアが開かない。絶望して振り向くと、今度は足元にまたあの白い顔が出現し、主人公はそこで気を失ってしまう。
意識を取り戻したとき、和式トイレには誰もいなかった。安心した主人公が再びトイレのドアを閉めたその瞬間、目の前には赤い着物を着た白い顔の女が……。そして物語は悲鳴とともに唐突に幕を閉じる。
古い旅館、和式トイレ、そして謎の女——。まさにジャパニーズホラーの定番といえる設定だが、予測不能な場所から現れる体のパーツの描写は気味が悪く、ゾッとしてしまう。それが映像的な演出による恐怖だと理解していても、本作を1度見てしまうと、古い和式トイレには近づけなくなってしまうほど怖かった。
■不気味に見下ろす血まみれの女…謎が謎を呼ぶ『訪問者』
『怪談新耳袋』第4シリーズ第71話に収録されている「訪問者」は、謎の血まみれの女性が登場し、視聴者に強烈なインパクトと後味の悪さを残したエピソードだ。
物語は、体調不良で学校を休んでいる女子学生・サキを、友人が見舞いに訪れる場面から始まる。
その頃サキは、鳴りやまない訪問者のチャイムに怯えきっていた。サキが窓からそっと外を見ると、全身血だらけの女が庭先にいるのだ。さらに、玄関の上部窓からは、その女が室内をじっと覗きこんでいるのであった。恐怖に震えるサキだったが、友人の訪問でわずかに安らぎを得る。
だが友人が帰ると、再びチャイムが鳴り響く。やがて玄関前で毛布をかぶって座り込むサキ。その視線の先には、やはりあの血まみれの女が生気のない顔で高い位置からサキを見下ろしていた。
その翌日、サキを心配した友人が再び家を訪れる。しかし、家の中は異様な雰囲気に包まれていた。なぜかドアノブや床に血が滴り落ちており、サキはそれを無言で拭き始める。
そのとき部屋のドアが開き、血まみれの手が侵入してくるように見えた瞬間、サキは「ダメ!」と叫ぶ。その常軌を逸した様子に怖くなった友人は家を飛び出し、あとには1人で一心不乱に血の付いた床を拭き続けるサキだけが残されるのであった。
結局、血だらけの女の正体も、サキが血を拭き続ける理由も、物語の中ではいっさい明かされていない。この説明のなさがかえって不気味さを増幅させるのだ。
ただひたすらに高い位置から、血まみれの女がサキを見下ろすシーンは恐怖でしかない。見終わったあとはただ不気味な余韻しか残らず、1人で家にいるのが怖くなってしまうエピソードである。


