■刺激を与えあうバディ型

 『シャーロック アントールドストーリーズ』(フジテレビ系)の若宮潤一は、文字通りの“ワトソン役”だ。本作は『シャーロック・ホームズ』シリーズの舞台を“令和の日本”に置き換えた作品で、ホームズにあたるのが主人公の誉獅子雄、ワトソンにあたるのが精神科医の若宮である。

 この2人の出会いはまさに“最悪”で、当初は険悪といってもいい雰囲気を漂わせていた。勝手に部屋に転がり込んできた獅子雄に、若宮は振り回されっぱなしだ。それでも、圧倒的な推理力を見せる獅子雄を若宮は徐々に認めていく。憎まれ口を叩き合うのも、なんだかんだお互いを信頼しているからこそだろう。

 彼らの関係性がよくあらわれている場面が、第4話にある。ボクサーに関する事件を捜査する中、若宮は単独で捜査を進めて推理を披露した。そして「どうだ、参ったか!」と勝ち誇ったような顔を見せたが、獅子雄は「甘いなぁ…」と一言。実は彼はとっくに真相を知っており、若宮を泳がせていただけだったのだ。

 その後はいつも通りにああだこうだと口論が繰り広げられる。いつもこの調子で言い合いをしながらも、2人は協力して真相にたどりつくのだ。

 他に目を移せば、『科捜研の女』(テレビ朝日系)の榊マリコと土門薫も、まさにバディといえる関係性の2人だ。土門は捜査一課の刑事であり、事件の捜査に関してはむしろマリコより前に出ることが多い。ただ、科学捜査に関してはマリコに頼っているほか、彼女の破天荒ぶりに振り回される場面も多く、“ワトソン役”的なキャラクター性も持ち合わせている。

 捜査のためならどこへでも向かい、危険なことすら平気でするマリコ。そんなマリコに振り回されっぱなしの土門だが、彼女の危険を察知して助けに現れる場面もしばしばある。この2人はファンの間では「どもマリ」と呼ばれ、唯一無二のコンビとして愛され続けている。

 マリコと土門の人生観はピタリと一致している。それがわかるのはseason19第33話でのこと。ある女性に「何を犠牲にしても犯罪者を捕まえることで生きる実感を得ている化け物」と言われてしまった土門は、その言葉について深く考えさせられることになる。その際のマリコとの会話に、2人の価値観や関係性が色濃く反映されていた。

 “自分の人生を犠牲にして犯人や証拠を挙げていると思ったことはあるか?”と問いかける土門刑事に対し、「私はそれが自分の人生だと思ってる」と返すマリコ。それを受け、土門は「俺は、この生き方をやめられない」と改めて宣言し、マリコも「私もよ」とすがすがしい表情を浮かべる。お互いの生き方を噛みしめるような姿には、2人の相性の良さを再度認識させられた。

 彼らは時にいい雰囲気を醸し出す場面もあるが、決して恋人になるわけではなく、事件を解決するという1点のみで、しかし強い絆でつながっている。

■探偵よりも優秀な天才型

 最後に紹介するのは『ネメシス』(日本テレビ系)の美神アンナだ。彼女はワトソン役でありながらも、実は探偵以上に天才的な推理力を持つ異色の存在である。

 「探偵事務所ネメシス」の探偵・風真尚希は、高い推理力を持っているように振る舞っているが、実はポンコツ。助手のアンナが謎を解き、彼をこっそりフォローして名探偵に仕立て上げているのだ。

 どこか憎めないポンコツ探偵・風真と、かなりの切れ者で天才すぎる助手・アンナ。この異色のコンビがクセになり、本作は映画化もされたヒットシリーズとなった。

 風間は「さぁ、真相解明の時間です」と得意げな顔で推理を披露し、すべての手柄を持っていってしまう。しかし、彼のほうも完全なポンコツというわけではなく、幅広い実務経験と人脈で事件解決のヒントを与えることも少なくない。それは本来、探偵ではなく助手の役目だが……。

 このように、通常とはホームズ役とワトソン役が正反対ではあるものの、2人のチームワークは抜群だった。このめったにない天才型のワトソン役は、ミステリードラマの常識を覆したといっても過言ではない。

 

 ミステリードラマの相棒役は、探偵役と同じくらい大事な存在だ。今回は紹介しきれなかったが、『古畑任三郎』の今泉慎太郎のように、ポンコツな引き立て役と思いきや、探偵本人にとっては欠かせない存在……というタイプもいる。

 今回取り上げたように、ワトソン役といってもそれぞれがまるで異なる個性を放っている。師弟型、バディ型、まさかの探偵よりも天才型など、ワトソン役にも注目してみるとミステリードラマの新たな面白さに気づくだろう。

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