■シリアスな展開に目が離せない『こどものおもちゃ』
最後は、1994年から1998年にかけて『りぼん』で連載された小花美穂さんの代表作『こどものおもちゃ』を振り返りたい。
本作の主人公は、天真爛漫なチャイドルの小学6年生・倉田紗南。だが、彼女のクラスは学級崩壊という深刻な問題を抱えており、その中心にいたのが複雑な家庭環境に苦しむ羽山秋人だった。紗南は荒れる羽山と向き合い、彼の痛みを受け止めることで二人の間には次第に恋が芽生えていった。
しかしその恋は、羽山家のネグレクト、紗南の過去など次々と重い問題に阻まれた。終盤では、クラスメイトの小森が起こした殺傷事件で羽山が刺され、命の危機にさらされる事態にも発展してしまう。
更にはその治療のために羽山が海外へ渡ることが決まり、事情を知らない紗南は強いストレスで表情を失う「人形病」に陥ってしまった。いつも明るい彼女の痛々しい姿が読者に強い衝撃を与えたのは言うまでもない。
羽山は必死に紗南を救おうとするも症状は悪化し、緊張感をはらんだまま迎えた最終回。一度は羽山の存在すら忘れた紗南は、加村直澄の助けによって記憶を取り戻す。そして羽山と駆け落ちのように家を抜け出した。
羽山はそこで「お前と離れたらダメんなるのはオレのほうだ」と涙ながらに本心を吐露し、その言葉で心が解けた紗南はやっと自分自身を取り戻すのだった。その後、紗南はロス行きを応援し、心の繋がりを信じて一度離れることを決意する。
それぞれが懸命に日々を過ごした2年後。二人は再会し、「会いたかった」とキスを交わす。いくつもの辛い出来事を乗り越え、固い絆で結ばれた二人にもう迷いはない。周囲の支えも得て、これから何があっても乗り越えてみせると前を向くのだった。
ヘビーな現実に幾度となく傷つきながらも、お互いを手放さなかった紗南と羽山の恋。決して平坦ではないからこそ、最終回で描かれた再会は二人らしい温かい余韻を残した。
嫉妬や別れ、家族の問題といったあらゆる問題に向き合いながら愛を育くむ様子を描いた90年代の『りぼん』の名作たち。幾度となく打ちのめされながらも想いを貫いた先に待っていた完璧なハッピーエンドは、令和の今でもきっと人々の心に深く刺さるだろう。


