日本のRPG史にその名を刻む『ファイナルファンタジー』シリーズ。エモーショナルなストーリー、ドラマチックな映像描写、心に染みる音楽が魅力の作品で、壮大な冒険を擬似体験するかのような感覚が味わえる。その魅力は、多くのファンを惹きつけてきた。
同シリーズには圧倒的な存在感を放つボスモンスターも多く、中でも“元人間だった”者の印象は強烈だ。
彼らは最初から怪物だったわけではない。残酷な真実を知り、世界の理不尽に押し潰され、あるいは愛する者を失った末に、人の姿を捨てていった。
今回は、数ある『ファイナルファンタジー』シリーズの中から“元人間だったボスモンスター”を3キャラ取り上げ、それぞれの悲劇について振り返っていく。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■“英雄”から“世界の敵”へと転落したセフィロス
英雄と呼ばれた男が、最も恐ろしい存在へと堕ちた例が、『ファイナルファンタジーVII』のラスボス・セフィロスだ。神羅カンパニーのソルジャーの中でもエリート中のエリートである彼は、圧倒的な実力を誇り、人々から「英雄」として崇められていた。
彼はただ強いだけではなく、仲間想いで友情に厚く、人格的にも非常に優れた人物だった。しかし、主人公のクラウド・ストライフとヒロインのティファ・ロックハートの故郷、ニブルヘイムでの出来事が、彼の運命を一変させる。
彼はこの地での任務中、自身が胎児の頃に古代種「ジェノバ(実際は宇宙生物)」の細胞を移植され、人工的な古代種として“作られた”存在だったと知ってしまった。
その事実を知った瞬間から、セフィロスの価値観は大きく歪んでいった。もともと“自分は周りと違う”と感じていた彼は、自身の出生の秘密を知ったことで、「古代種」としての使命に燃えるようになる。そして、自身を裏切った人間や世界に対する復讐のため動き始めるのだ。
やがてセフィロスは星の精神エネルギー「ライフストリーム」に落ち、さらなる真実にたどり着くが、決して止まることはなかった。それどころか星と一体化し、人間はおろか古代種をも超えた「神」になろうと目論むようになる。
セフィロスの悲劇の始まりは、“人間”として生きてきた時間そのものを否定されたことにあるだろう。英雄として積み重ねてきた誇りも、居場所も、すべてが嘘だったと知った時、彼は人であることを捨てるしかなかったのだ。
■救済を求めて怪物になったシーモア=グアド
『ファイナルファンタジーX』のシーモア=グアドは、最初から「純粋な悪」として描かれるキャラクターではない。「グアド族」の族長である彼は、物腰が柔らかで民からの信頼も厚く、一時は主人公のティーダたちと共闘する場面も描かれる。
しかし、ヒロインのユウナに対して常軌を逸した執着を見せるようになり、次第に彼の本性が明らかになっていく。実は彼は、自らが怪物「シン」となり、スピラに死と破壊をもたらそうとする歪んだ目的の持ち主だった。
彼がこうした危険な思想に至った経緯は、その悲劇的な過去にある。グアド族の父親とヒト(人間)の母親を持つシーモアは、母とともに排他的な一族の人間たちから迫害され続けていた。
そんな中、母はシーモアが召喚士として大成できるよう、自らの命を捧げて究極召喚の祈り子となる。その裏には、自身の余命がわずかだと悟っていた彼女の、自身の死後も息子が1人でも生きていけるよう力を与えたいという切実な想いがあった。
しかし母の行為は、シーモアにとって救いにはならなかった。むしろ、唯一の支えだった最愛の母を失ったことで、彼は世界そのものに絶望を抱いてしまった。
やがてシーモアは、究極召喚を利用してシンと融合することで、スピラを滅ぼす道を選ぶ。彼が求めたのは支配でも快楽でもない。ただ、「死をもって苦しみの連鎖を断ち切る」という、歪んだ救済だった。シーモアは悪であると同時に、世界の残酷さに壊されてしまった存在でもあったのだ。


