■生き物を使ったトリック
season13第14話「アザミ」は、双子の少女・奏と響をめぐるノスタルジックで哀しい物語だ。
このエピソードは老舗ヴァイオリン工房の社長夫人・新宮孝子の死から始まるが、その発端は15年前に孝子と夫の蔵人が犯した、姪・奏の殺害事件にあった。
夫妻には音楽の才能がまるでなかったが、奏は世界的権威に認められるほど良い耳を持っていた。将来、姪に社長の座を奪われることを恐れた夫妻は、彼女の殺害を計画。事故死に見せかけるため、犯行に使用したのはなんとスズメバチだった。
蔵人は台湾で学んだ方法を使ってスズメバチを生け捕りにし、逆さにしたティーカップの中に隠した。それからティータイムと称し、孝子がスズメバチを仕込んだティーセットを奏の部屋へ運んだのである。
しかし、それだけではハチが確実に奏を襲うとは限らない。そこで夫妻は、さらに一計を案じていた。「母親の形見」だと嘘をつき、ハチを引き寄せる甘い香りの香水を奏に渡していたのだ。姉妹が普段から黒い服を着ていたことも、ハチに襲われやすい状況を作り出していた。
計画通り、奏はハチに襲われて死亡。夫妻は彼女が部屋から脱出できないようドアを塞ぎ、助けを求める姪の声が絶えるのをただ待っていたのである……。
この事件には、双子ならではのトリックも隠されており、二重三重に張り巡らされた伏線も見事である。殺人トリック以外にも見どころが多く、繰り返し観たくなる一編だ。
『相棒』には、時にはコミカルでさえある奇抜なトリックが登場する。右京の卓越した発想力がなければ、到底真相にたどり着けないであろう事件の数々は、今なおファンの間で語り継がれている。
特に冷凍イカに関しては、薫のトラウマとして後のシーズンでも言及されるほどで、『相棒』史に残る伝説となった。イカ、便座、スズメバチ……。「どうやって考え付いたんだろう」と唸らされる奇想天外なトリックは、『相棒』ワールドならではの独特の面白さといえるだろう。


