■映画オリジナルキャラながら屈指の美形が登場…映画第3作目『真紅の少年伝説』
『聖闘士星矢 真紅の少年伝説』は「東映まんがまつり」の枠から離れ、1988年(昭和63年)7月に「週刊少年ジャンプ創刊20周年企画」として『魁!!男塾』と同時上映された70分の映画作品。当時の劇場版シリーズの中では、もっともヒットした作品として知られています。
今回の敵は、アテナの兄である太陽神フォェボス・アベル。彼は地上を汚した人類を一掃するため、大洪水を起こそうと目論みます。沙織は、それを阻止しようと単独で動きますが、逆にアベルによって死の国へと墜とされました。沙織を救うべく星矢たちは禁断の地に乗り込みますが、そこに十二宮で命を落としたサガたち元黄金聖闘士、さらにアベルを守る3人のコロナの聖闘士が立ちはだかります。
アベルの声は、独特な言葉遊びで有名な広川太一郎さん、3人のコロナの聖闘士役を神谷明さん、古川登志夫さん、森功至さんが担当。レジェンド級の声優陣による演技は圧巻で、個人的には広川さんによる尊大な演技と神谷さんの力強い声が、今も印象に残っています。
本作最大の見どころは、映画のオリジナルキャラクターであるアベルの美形ぶりと、圧倒的な神々しさ。広川さんの名演技もあって、当時多くの女性ファンを魅了しました。
そんなアベルは、妹アテナとの仲むつまじいシーンが描かれる一方で、人類を滅ぼそうとする底知れぬ恐ろしさが対照的でした。
それに1作目、2作目の映画よりも尺が長かったこともあって、キャラクターの細やかな心情まで丁寧に描かれ、サービスシーンも満載。多くのファンが期待を寄せた黄金聖闘士5人の復活は、人気のカミュやシュラがコロナの聖闘士にあっさり倒された一方、デスマスクとアフロディーテはそれなりに見せ場が存在。サガにいたってはアテナの真意を見抜いて星矢を導くなど、予想外の展開も楽しめました。
そしてこの映画の作画は、これまでにも増して美麗。衝撃波によって勢いよく飛ばされる派手な演出が多用され、個々のキメポーズやセリフなど見どころも盛りだくさんでした。
なかでも、星矢たちの聖衣が原作準拠のデザインに戻され、クライマックスでは星矢だけでなく、紫龍や氷河まで黄金聖衣(天秤座&水瓶座)をまとうシーンは激アツ。そのシーンを大きなスクリーンで観れたのもポイントが高かったです。
また劇中、アベルが竪琴で奏でる『アベルのテーマ』は、哀愁漂うハーブの音色がその神話性を増幅させ、物語を象徴する名曲として今も高い評価を受けています。
これらの美しい楽曲は作曲家・横山菁児さんによるものですが、映画の劇中曲『灼熱の聖闘士』がのちにプロレスラー・橋本真也さんの初の個人テーマ曲として使用された時は、個人的に大変驚きました。
ちなみに、ネットなどなかった昭和の時代。ギリシア神話にエリス、北欧神話にはフレイやロキなどがいることを知り、ならば「太陽神アベルもいるはずだ!」と必死に本を読み漁るほど夢中になった、今も大好きなキャラクターのひとりです。
1989年(平成元年)3月に公開された『聖闘士星矢 最終聖戦の戦士たち』は、劇場映画第4作で、再び「東映まんがまつり」枠での上映となりました。しかし、それまで作画監督などを務めた荒木伸吾さんがテレビアニメの「ポセイドン編」に注力するため不参加となり、前3作とは少々雰囲気が異なりました。
これまでのキラキラとした劇場シリーズならではの華やかさは影を潜め、母親への思いを断ち切る氷河の葛藤、あえて瞬を突き放す一輝の厳しさなど、主要キャラの精神的な成長を深く掘り下げた作品として評価されています。
昭和から平成へと移り変わる中で生まれた『星矢』の映画は、まだ「スピンオフ」や「パラレルワールド」といった概念が世間に浸透してない時代の作品です。原作との整合性がとれない部分もありましたが、それでも原作にはない大胆なオリジナル展開で少々強引に押し切り、スクリーンを見守るファンも「これはこれで良し!」と思わせるだけの圧倒的な熱量と勢いがありました。
そして、これらの映画で生まれた要素やキャラクターの造形は、のちに平成・令和のスピンオフ作品にも多大な影響を与えているのです。
エリスやフレイ、そしてアベルといった「映画オリジナルのキャラ」が放つ強烈な輝きがあったからこそ、星矢をはじめとする原作キャラの魅力がさらに増幅されたのは間違いないでしょう。





