■ちりばめられた謎と圧倒的な没入感…映画第2作目『神々の熱き戦い』
1988年(昭和63年)3月、再び「東映まんがまつり」の枠で公開された46分の短編映画が『聖闘士星矢 神々の熱き戦い』。前作『邪神エリス』に比べて状況説明が大胆に省かれ、その分怒涛の盛り上がりで観客を物語に引き込んだ傑作です。
舞台は北欧アスガルド。シベリアの氷原で襲われていた赤ひげの兵士を助けた氷河は、「神々の戦いが始まる」と告げられ、調査のためにアスガルドへと向かったまま消息を絶ちます。あとを追った星矢たちでしたが、ワルハラ宮で待ち受けていたオーディーンの地上代行者・ドルバル教主によってアテナは封印。救出に向かう星矢たちの行く手を、神闘士(ゴッドウォーリアー)が阻みます。
本作では、物語の至るところに「あれっ?」と思わせるフックが仕掛けられていました。たとえば、初めて会う沙織に熱い視線を送る青年・フレイ。すれ違った仮面の神闘士ミッドガルドに何かを感じる紫龍。氷河に助けられた赤ひげの兵士が、なぜか敵の本拠地に平然と居合わせる不自然さ……など。
こうした説明の省かれた小さな違和感の積み重ねが、北欧アスガルドの冷たい空気感と相まって独特の不気味さを与えていました。
異質な敵ドルバルの声は『未来少年コナン』のレプカ役でも知られる家弓家正さんが担い、絶望的な威圧感を放つ名演技を披露。神闘士役には水島裕さん、村山明さん、玄田哲章さん、ワルハラ宮の司祭フレイを難波圭一さんが演じるなど、重厚すぎる豪華キャストでした。
この作品の目玉の1つが、行方不明だった氷河が洗脳され、敵(ミッドガルド)として現れる緊迫した展開でしょう。なぜ氷河が洗脳されたのか、本物のミッドガルドはどうなったかなどの説明は一切ありませんが、その唐突さこそが昭和のアニメ映画ならではの勢いを実感させてくれます。
また、同作の決着シーンも独特です。聖衣を装着した星矢たちでさえボロボロにしたドルバルの猛攻を、司祭の肩書(肉体的に一般人)を持つ生身のフレイが何度も耐え抜き、最後は彼がオーディーン像を破壊することでアテナを救出します。
つまり、最終的にゲストキャラが物語を解決に導くという、映画シリーズの中でも珍しい終わり方でした。
とはいえ、オーディーン像の崩壊とともに、氷に閉ざされていたアスガルドに暖かな陽光が差し込み、色とりどりの花々が咲き乱れるラストシーンは印象的。映画の公開時期が3月だったこともあり、現実世界とリンクしたこの美しい演出は、当時のファンの心に深く刻まれました。
ちなみに、物語の冒頭と途中に登場した赤ひげの兵士は、その特徴的な容姿に加え、左側の角が折れた兜をかぶっているなど、同一人物であることを強調するような意味深な描写。しかも、その声は『機動戦士ガンダム』のドズル・ザビ役でおなじみの郷里大輔さんであり、「これは何らかの伏線?」と勘ぐるも、結局ただのモブキャラで終わるという、個人的にはシリーズ最大の謎だった点も印象深いです。


