数万円から数十万円の値段がつくこともある「レトロゲーム」の世界。そんなソフトがズラリと揃う『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長にして、自身も大のゲームコレクターである大竹剛氏が、毎回1本のソフトを語るこの連載。今回、ショーケースに並ぶソフトの中から取り上げるのは——?
■レトロゲームファンからの注目度は低め?価格は現在上昇中
ハードオフ大竹店長の「レトロゲームちょっといい話」第30回
『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長、大竹剛です。私はレトロゲームだけではなく電子ゲームも大好きで、個人的に収集もしています。この連載でも以前、バンダイの『LCDゲームデジタル』シリーズを取り上げましたが、任天堂の『ゲーム&ウオッチ』シリーズには、まだちゃんと触れていませんでした。
おさらいしておくと、『ゲーム&ウオッチ』は、1980年に任天堂から発売された小型の液晶ゲーム機です。当店でも扱っていますが、人気の高いファミコンやスーパーファミコンのソフトに比べると、レトロゲームファンからの注目度はさほど高くない印象です。とは言え、熱心に見ているマニアの方はいらっしゃいますね。
中古価格はじわじわ上昇する傾向にありまして、たとえば、大ヒットした『ファイア』(1980年)のオリジナル版は、箱と取扱説明書付きで現在1万6500円(税込)で販売しています。
また、数が少ないものは高額になっていて、画面が大きくなった「ワイドスクリーン」の『ポパイ』(1981年)や、折りたたみ式で2画面ある「マルチスクリーン」の『マリオブラザーズ』(1983年)は、3万3000円(税込)で販売中です。
■ファミコンの開発責任者・上村氏の作った『ボール』があった!?
私が最初に買ってもらったゲーム&ウオッチは『ファイア』でした。たしか小学4年生か5年生のときだったと思います。友だちのなかでも早いほうだったんじゃないかな。もう、嬉しくて延々と遊んでいました。ポーズができないので、はじめたらひたすらやってしまう……というか、やるしかない(笑)。
地元の新潟では、ゲームのテレビコマーシャルはあまり流れなかったんですが、野球中継では必ず任天堂のCMが入っていました。野球に興味はなかったけれど、ゲーム&ウオッチのCM目当てで見ていましたね(笑)。そのうち、周りでも持っている子が増えてきて、友だちにワイドスクリーンを借りたりしましたよ。
最初期となる1980年に発売されたのは、ジャグリングのように球をキャッチする『ボール』を皮切りに、キャラクターが掲げた旗と同じ数字を押す『フラッグマン』、モグラたたきみたいな『バーミン』、ビル火災から脱出する人を救助する『ファイア』、左右のキャラがハンマーで叩きあう『ジャッジ』の5種類。
このなかでは、『ファイア』のゲーム性が飛び抜けてスゴいと思います。映画『タワーリング・インフェルノ』を彷彿させますよね。ゲーム&ウオッチを初期に購入したほとんどの人が『ファイア』を選んだのではないでしょうか。
反対に、『フラッグマン』は売れなかったんじゃないかと思います。指示通りの数字を押していくだけで、ちょっとゲーム性が単調な感じ。正直、私もハマることはなかったですね。
そのせいか、現存している数も少ないようで、当店にも在庫がありません。私自身も、状態が非常に悪いものを1つ持っているだけ。ネットオークションでは、完品がかなりの高値で取り引きされているようです。
そうそう、『ボール』に関しては変わった思い出があります。2018年に、京都の城陽市歴史民俗資料館で『CONTINUE〜“ゲーム”90年の歴史〜』という特別展が開催されました。私は昔のゲーム機などの展示を少しお手伝いしたのですが、そのとき会場で、元任天堂でファミコンの開発責任者だった上村雅之先生にお会いすることができたんです。
上村先生は、講演などで協力されていたほか、なんと、『ボール』を電子工作で再現して、会場で遊べるように展示していたんですよね! 木製の筐体に、『ボール』の画面に似せたパネルが貼り付けてあって、球はLEDで表現していました。ボタンを押すとキャラクターの腕がサーボで動くようになっていて……。
発想がスゴいですし、特別展の期間終了後に壊してしまっていたのもスゴい(笑)。「取っておくことに意味はない」みたいなお話をされていて、しかも2年後に同様の特別展が開催されたときには、別の新しい工作をまた用意されていて……「僕らとは違う次元にいる方だ」と思いました。


