■革新的マッチングシステム──撃ち合いが苦手でも大丈夫

 筆者があらためて『ARC Raiders』に感心したのは、プレイヤーの「好戦性」に基づいたマッチングシステムの存在である。

 2026年1月、海外メディア「GamesBeat」のインタビューにおいて、Embark StudiosのCEOパトリック・ソダーランド氏は、マッチングシステムの仕組みについて明かした。

 本作ではプレイヤーの行動パターンを分析し、好戦的なプレイヤーは好戦的なプレイヤー同士、平和的なプレイヤーは平和的なプレイヤー同士でマッチングされるという。

 さらに、ソロプレイとチームプレイ(デュオ・トリオ)のマッチも分離されており、ひとりで出撃したのに3人組の相手に囲まれるといった理不尽な状況が起きにくい設計となっている。

 つまり、それまでPvPを避けて探索やクエストに集中してきたプレイヤーは、同じ平和的な志向のプレイヤーとマッチングしやすくなるのである。

 実際に筆者がPvPをほとんどしていなかったときは、出会うプレイヤーのほとんどが友好的で、エモートだけで平和なコミュニケーションが成立することも珍しくなかった。

 また、本作に用意された「無料ロードアウト」という救済措置も初心者にとってありがたい存在だ。装備をまったく持っていない場合も、「無料ロードアウト」を選べば最低限の武装が支給される。

 それを持って出撃し、たとえ死んだとしても失うものはない。それどころか、無事に帰還できれば、地上で獲得した物資だけでなく、支給された武装まで自分のものになるのだ。

 『Escape from Tarkov』のような硬派な脱出型シューターでは、「装備を失う恐怖」が初心者にとって大きなハードルだったが、本作は誰でも気軽にプレイしやすいカジュアルさが魅力だ。


 『ARC Raiders』は、脱出シューターというジャンルの敷居を大きく下げた画期的な作品といえる。「ドンシュー文化」が生んだ「対戦も協力も裏切りも体験できる」独特のゲーム性、プレイヤーの好戦性に基づくマッチングシステム、そして無料ロードアウトによるリスクの軽減。これらの要素が組み合わさることで、シューターが苦手な人でも「自分なりの遊び方」を見いだせる懐の深さがある。

 そして何より、このゲームは「人間」を描いている。信じたい気持ちと、裏切られる恐怖。弱った相手を見逃す優しさと、好機を逃さない狡猾さ。ARCという共通の敵を前にしながら、一枚岩になれない人間の業が、30分間のレイドの中に凝縮されているのだ。

 本作の対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Games Store)、PS5、Xbox Series X|Sで、クロスプレイにも対応。異なるハードを持つ友人とも一緒に遊べる。

 「脱出シューターに興味はあるけど、タルコフは難しそう……」と二の足を踏んでいた人にこそ、『ARC Raiders』を強くおすすめしたい。一期一会のプレイヤーたちと「ドンシュー」を交わし、にらみ合い、ときに裏切られ、それでも共に生還する……そんな人間ドラマを、ぜひ体験してほしい。

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