■伝統キャラクターを軽やかにアップデート『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』長澤まさみ
「東宝シンデレラ」オーディション出身の長澤まさみさんは、史上最年少となる12歳でグランプリを獲得し、芸能界入りを果たした。その後、若手女優として注目を集める中、16歳で出演したのが『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)、そして『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)である。
この2作で長澤さんは、同じく「東宝シンデレラ」オーディション出身の大塚ちひろ(現:大塚千弘)さんとともに、「小美人」として登場。モスラと意思疎通をおこない、人類に重要なメッセージを伝えるという神秘的な役割を担った。
小美人といえば、昭和の人気双子デュオであるザ・ピーナッツが演じたことでも知られる伝統的キャラクターである。しかし本作では、従来の民族調のデザインから一新され、赤を基調としたモダンなセパレート衣装が採用されている。
この軽快で現代的な装いに、当時16歳とは思えないほど整った長澤さんのプロポーションが重なり、神秘性とフレッシュさを併せ持つ新しい小美人像を強く印象付けた。
それから時を経て2015年、「ゴジラヘッド」で知られる新宿歌舞伎町の新宿東宝ビル完成記念式典に出席した長澤さんは、レッドカーペット上でゴジラと対面。「『お久しぶり』って感じです」と笑顔で語り、約10年ぶりの再会を楽しんでいた。
若き日に特撮の世界でゴジラと向き合った経験が、今も彼女の中で大切な記憶として刻まれていることが伝わってくるエピソードだ。
■一瞬の登場でも忘れられない存在感『侍戦隊シンケンジャー』原菜乃華
2022年公開のアニメ映画『すずめの戸締まり』で、ヒロイン・岩戸鈴芽役の声優を務め、一躍注目を集めた原菜乃華さん。2025年にはNHK朝ドラ『あんぱん』にも出演し、次世代を担う女優として存在感を高めている。
そんな原さんのキャリアのスタートは2009年、わずか6歳のときに受けたネットスカウトオーディションへの合格だった。同年から子役としてドラマ出演を重ねていくが、その中の1本がスーパー戦隊シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』の第34幕「親心娘心」である。
本作の怪人・外道衆が学校に現れ、次々と子どもたちが連れ去られていく緊迫した場面。原さんはその渦中にいる少女の1人として登場する。必死に教室から逃げようとするも途中で倒れ、「きゃー」と悲鳴を上げる姿が印象的だ。最終的に、逃げ遅れたところをシンケンピンクに抱きかかえられて救出されるという役どころであった。
出番は決して長くないが、ツインテールに大きな瞳が印象的なこの少女は、視聴者の記憶に強く残った。その後、数々の作品に出演していくことになる原さんにとっても、今なお名作として語られる『シンケンジャー』への出演は、輝かしい経歴のひとつとなったのではないだろうか。
特撮作品は、派手なアクションや映像の裏側で、俳優の豊かな感情表現や存在感が強く試される現場でもある。今回紹介した4人の女優たちは、子役・ティーン時代にその独特の世界を経験し、それぞれの形で確かな一歩を刻んでいた。
現在、第一線で輝く彼女たちを知った上で当時の特撮作品を振り返ると、「この頃からすでに光っていた」という新たな発見がある。
特撮は、未来の名女優たちが才能をきらりと輝かせる原石の舞台の舞台なのかもしれない。そんな視点で過去の作品を見返してみると、また違った楽しみ方ができるはずだ。


