漫画やアニメを原作とした実写化映画では、キャラクターの再現度が作品の評価を大きく左右するといっても過言ではない。原作ファンはもちろん、新たに作品に触れる視聴者にとっても、そのキャラクターがいかに“原作そのまま”であるかは、物語へ没入できるかどうかを決める重要なポイントだ。
実写化作品が次々と生み出される中、原作へのリスペクトを胸に、細部までこだわってキャラクターに命を吹き込む女優たちがいる。特に外見などに強い個性を持つキャラクターを演じた際に視聴者にもたらされる衝撃は大きく、時を経てハマり役として語り継がれることも少なくない。
そこで今回は、数ある実写化映画の中でも圧倒的な完成度で視聴者を魅了した女性キャラクターたちを5回にわたってピックアップし、その再現力の高さを振り返っていく。
【第2回/全5回】
■アクションも妖艶さも完璧に再現した長澤まさみさんの楊端和
原泰久さんによる同名漫画を実写映画化した『キングダム』シリーズ。原作は現在も『週刊ヤングジャンプ』にて連載中だが、実写映画は2019年公開の第1作を皮切りに4作品が制作され、2024年公開の『大将軍の帰還』は興行収入80億円を突破。シリーズ累計でも235億円超えと、実写映画としてトップクラスのヒット作となっている。
舞台は、秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓が覇権を争う春秋戦国時代末期。天下の大将軍を目指す信と、中華統一を掲げ後の始皇帝となる嬴政の激動の歩みを、史実を踏まえながら壮大なスケールで描く歴史アクションだ。
実写化は賛否が分かれやすいジャンルだが、本作はアクションの迫力に加え、キャスティングの素晴らしさと再現度の高さが大きな支持を集めている。
主人公・信役には山崎賢人さん(※崎はたつさき)、嬴政役には吉沢亮さんを起用。さらに、独特の語り口と群を抜く強さで人気の王騎将軍を大沢たかおさん、河了貂役を橋本環奈さん、羌瘣役を清野菜名さんらが務め、キャラクターの魅力を余すところなく体現した。
そんな中、圧倒的な美しさで観るものを魅了したのが楊端和を演じた長澤まさみさんである。楊端和は、数々の部族からなる山の民をまとめる山の女王。妖艶な雰囲気をまとい、高い統率力とカリスマ性で猛者たちを引っ張る、強くたくましい最高にクールな女性である。
普段は爽やかな笑顔で多くの人を魅了する長澤さんは、本作でその笑顔を封じ、低く落ち着いた声と鋭いまなざしで挑む。そして、美脚を惜しげもなく見せる露出度の高い衣装を堂々と着こなし、そこから放たれる強さと色気で視聴者の目を釘付けにする。凛と立つその姿は、まさに漫画から抜け出してきたかのような圧巻の再現度だった。
実写化映画での最大の見せ場は、1作目にある。当初、楊端和は過去の出来事から秦を信頼していなかった。だが、力を貸してほしいと真っ直ぐに伝えてくる嬴政の言葉に心を動かされると彼らと同盟を結ぶ。そして山の民を引き連れて戦場に降り立ち、不利な状況でも恐れることなく自ら先導して戦いの中に身を投じていく。
王都奪還戦にて長澤さんが二本の刀を振り回す激しい戦闘シーンは、目を見張るほどの迫力だった。鋭い剣さばきと滑らかな跳躍、仲間を鼓舞する力強い声、そのすべてが女王としての誇りと覚悟を体現している。
長澤さんは楊端和を演じるにあたり、剣に振り回されない強さを身に着けるべく、毎日ベッドを前に寸止めの素振りを両手で100回していたのだそう。それによって見たことのないところに筋肉がついたと明かしていたが、作中で見せてくれた引き締まった肉体は美しいの一言だった。
その後、楊端和は『運命の炎』『大将軍の帰還』で再び少しだけ登場する。1作目のような派手なアクションはないものの、変わらぬ美しさで登場した長澤さんに視聴者からは「また見られて嬉しい」といった声が多く寄せられた。
2026年の夏には、5作目の公開が決定している『キングダム』。少し先になりそうではあるが、今後展開されていく物語の中では楊端和の活躍する場面も増えていく。長澤さんの華麗なアクションが再び見られる日が、今から待ち遠しくてたまらない。


