■『ミステリと言う勿れ』自身の取調中に事件を解決!?

 人気漫画を原作とする月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』。菅田将暉さん演じる主人公・久能整の淡々とした語り口調が視聴者を魅了し、劇場版が制作されるほどの人気作となった。

 本作は、主人公が殺人事件の容疑者となる異色の展開で幕を開ける。特筆すべきは、ごく普通の大学生である久能が、取調室の中で「安楽椅子探偵」として活躍する姿だ。

 物語は、ある大学生が刺殺されたことから始まる。容疑者として挙げられたのは、被害者の高校の同級生であり現在も同じ大学に通う久能。風変わりかつマイペースな男で、それほどの動揺を見せずに取り調べに応じる。

 2日、3日……と取り調べが続くうち、久能は刑事たちとの対話を通じて、彼らが抱える問題や葛藤を次々と言い当てアドバイスまでする。その卓越した観察眼と論理的な思考を見て、刑事たちは次第に彼の有能さに気づき始めた。

 驚くべきは、取り調べ5日目だ。自身に不利な証拠が揃う中、久能はこれまでの他愛ない会話から得たヒントをつなげて、事件の真相にたどり着く。

 真犯人は、久能の取り調べを担当していた敏腕刑事・薮鑑造だった。彼は、家族の仇を殺害し、その罪を無関係の久能に着せるため、周到に計画を進めていたのである。

 平凡な大学生の久能が、取調室という限定空間で会話のみを頼りに真相を解明する姿は、まさに安楽椅子探偵そのものである。彼の魅力や能力に気付いた若手刑事たちが協力してくれる展開も印象的だ。手足となって情報を集める協力者の存在は、安楽椅子探偵にとって必要不可欠なのである。

 

 「安楽椅子探偵回」の魅力は、会話劇を中心とした知的な展開にある。登場人物の何気ない会話や仕草を手がかりに、少ない情報から隠された真実を明かす過程は、上質なミステリーならではの興奮を視聴者にもたらすだろう。

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