なぜ『宇宙刑事ギャバン』は昭和キッズを夢中にさせたのか 出演者も主題歌も世界観も「超一級品」…の画像
『宇宙刑事ギャバンBlu-ray BOX 1』(東映ビデオ) (C)東映

 現在、テレビ朝日系列の特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」が、現在放送中の『ナンバーワン戦隊 ゴジュウジャー』をもって終了するという報道が出ている。

 この一報に多くの特撮ファンが肩を落としたが、その後、来春のスーパー戦隊シリーズの枠では、かつて1980年代から90年代にかけて放送された「メタルヒーローシリーズ」の放送が検討されているという情報も報じられた。

 一部では「令和版宇宙刑事ギャバン」などと報じるメディアもあり、特撮ファンの間で大きな反響を呼んでいる。

 そこで40年以上前(1982年)に放送された昭和の特撮番組『宇宙刑事ギャバン』とはどのような作品だったのか、その魅力についてあらためて振り返ってみたい。

※本記事には作品の内容を含みます。

■元祖メタルヒーローは演者も凄かった!

 『宇宙刑事ギャバン』は、1982年(昭和57年)に放送が始まった東映の「メタルヒーローシリーズ」第1弾となる特撮ヒーロー作品。地球征服を狙う宇宙犯罪組織マクーの魔の手から地球を守るため、銀河連邦警察より派遣された宇宙刑事・ギャバンが、銀色に輝くコンバットスーツをまとった姿で戦う物語だ。

 ギャバンは、宇宙刑事だったバード星人の父・ボイサーと地球人の母・一条寺民子の間に生まれた青年。地球では正体を隠し、一条寺烈としてアバロン乗馬クラブで働きながらマクーが起こす事件に立ち向かう。

 だが、マクーが現れるたび仕事を抜けるため、乗馬クラブのオーナーからもらえる給料はわずか3000円。本業は宇宙刑事だが、副業とはいえこの金額はちょっと切ない。

 そんな愛嬌あるヒーローを演じたのは、ジャパン・アクション・クラブ(略称・JAC)に所属し、多くの特撮作品に出演していた大葉健二さん。

 大葉さんは元スタントマン出身のアクション俳優で、特撮番組『人造人間キカイダー』(1972年)にスタント(スーツアクター)として参加。スーパー戦隊シリーズ第3作『バトルフィーバーJ』(1979年)でバトルケニア、第4作『電子戦隊デンジマン』(1980年)ではデンジブルーと、立て続けに主要キャラを演じていた。

 その高い身体能力を活かし、迫力あるアクションを自ら演じることに定評がある大葉さんは、『ギャバン』でも主演ながら幾度となくスタントを担当。2012年に公開された劇場映画『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』では、50代後半を迎えた大葉さんが生身のスタントを披露し、特撮ファンを驚かせた。

■魅力あるヒロインと超大物俳優の出演にファン騒然!?

 『ギャバン』では魅力あるキャスト陣が人気を後押しした。

 ギャバンの上司でコム長官の娘ミミーは、戦闘能力は低いもののサポート役として登場。ギャバンに好意を抱く彼女は、彼が地球に赴任する際にこっそりついてくるほどおてんばな美少女だ。

 ペンダントを使ってインコに変身したり、テレパシーや予知などバード星人特有の不思議な能力を持っていたりと、さながら魔法少女のようだった。

 そんなミミー役を演じたのは、テレビドラマ『江戸川乱歩の美女シリーズ』にも出演していた女優の叶和貴子さん。未来感ある衣装や白のミニスカートをスタイル抜群の叶さんが見事に着こなし、番組に華を添えていた。

 またギャバンの父・ボイサー役を演じたのは、名優・千葉真一さん。言わずと知れたJACの創設者であり、千葉さん自身もアクション俳優として有名。『ギャバン』の前年(1981年)に公開された映画『魔界転生』では、燃えさかる炎の中で迫力あふれる殺陣を披露し、話題となった。

 その千葉さんが、同じJACに所属する大葉さんの主演作に出演。マクーに捕えられ、激しい拷問を受けてボロボロになったボイサーを熱演した。派手なアクションシーンはなかったが、第43話「再会」でギャバンの優しい父親として最期を迎えるシーンには、多くの視聴者が涙した。

 ちなみに1983年公開の角川映画『里見八犬伝』では、大葉さんと千葉さんが同じ「八犬士」として共演。これを観た時、個人的にはボイサーが救われたようで嬉しかった。

 本作は役者だけではなく、ナレーションも魅力のひとつだ。担当したのは洋画の吹き替えや『トランスフォーマー』シリーズのナレーターとしても知られる政宗一成さん。

 変身時の「宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを“蒸着”するタイムはわずか0.05秒に過ぎない。では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」という独特のナレーションは、ファンからの支持も厚い。

 さらに串田アキラさんが熱唱する主題歌や、渡辺宙明さんが作曲した楽曲のどれもがカッコよく、今も思わず口ずさんでしまうほど魅力的である。

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