テレビアニメ『機動戦士ガンダム』のメカニックデザイン企画「MSV(モビルスーツバリエーション)」では、さまざまな専用機や試作機が設定された。その中で「RX-78 ガンダム」の強化プランとして登場したのが「フルアーマーガンダム」だ。
同機は、地球連邦軍が一年戦争時に進めた「FSWS計画(フルアーマーシステム&ウェポンシステム)」によって生まれ、このコンセプトは後のガンダムたちの強化プランにも引き継がれていく。しかし時代が進むとともにフルアーマー化の流れは独り歩きし、名称や仕様は多様化していった。
そこで今回は宇宙世紀のガンダム作品における有名な「フルアーマー」機体の中から、筆者の独断と偏見で、とくに個性の強さを感じた機体たちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■名前はフルアーマーだけど、フルアーマーじゃない?
OVA『機動戦士ガンダムUC』には「フルアーマーユニコーンガンダム」が登場する。この機体はユニコーンガンダムの火力および継戦能力アップのため、現地改修という形で母艦「ネェル・アーガマ」にあった、あらゆる他のモビルスーツ(MS)の装備類を搭載して実現したもの。
ただし、防御面はユニコーンガンダム本来のシールドを増設しただけにとどまり、装甲等は増えていないため、防御性能的には「フルアーマー(Full Armor)」とは呼べない状態になっている。そのため公式から「フルアーマメント(Full Armament=完全武装)」を指していると補足されていた。
フルアーマーユニコーンの仕様と名称は、主人公バナージ・リンクスのルームメイトであるタクヤ・イレイの発案である。アナハイム工専に通う彼は大のMSマニアのため、ガンダムの強化プランといえば「フルアーマー」という名称にこだわりがあったようだ。
またユニコーンガンダムは装甲をスライドさせることで「デストロイモード」へと変形する機構があるため、安易な武装追加には適さないという事情もあった。しかし、学生の発案でありながら、ユニコーンガンダムの変形を阻害せず、高い火力と継戦能力の向上という当初の目的を実現したのだから驚きである。
このほかにも別プランとして、ゲームやイベント限定映像などに登場した「ユニコーンガンダム ペルフェクティビリティ」という形態も存在。これは現地改修ではなく、もともとユニコーンガンダムの強化のために設計・開発された「アームド・アーマー」のすべてを搭載している。
■鉄壁の防御を誇る「フルアーマー」にふさわしい形態
長谷川裕一氏が手がける漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』(KADOKAWA)に登場したのが、「クロスボーン・ガンダムX-1 フルクロス」だ。
同MSはクロスボーン・ガンダムの最終決戦仕様であり、少数で敵の大群に切り込むために防御機能を限界まで高めた強化形態となっている。
もともとクロスボーン・ガンダムがまとっていた「ABC(アンチ・ビーム・コーティング)マント」を積層構造化し、「クロスボーン・ガンダムX-3」のみに装備されていたIフィールドジェネレーターを搭載。さらに補助スラスターなども追加され、高い防御性能と機動力を兼ね備えた、「これぞフルアーマー」と呼べる代物になっている。
「フルアーマー」ではなく「フルクロス(Full Cloth)」と呼ばれるのは、海賊が着るようなコート状の防御兵装を備えているためである。
劇中では、フルクロスを含めた7機のMSで「木星帝国」が擁する多数の軍勢と戦い、その高い防御力を活かして血路を開いた。しかし木星帝国総統の「光のカリスト」が乗る「ディキトゥス」は、クロスボーンガンダムを大幅に上回るスペックを誇り、フルクロスも劣勢に追い込まれていく。
しかし最後は主人公トビア・アロナクスのとっさの機転で、防御兵装である肩のIフィールド発生装置をナックルガードにしたパンチから、ナックルガード内に仕込んであったブランド・マーカー(ビームシールド)でディキトゥスのコクピットを貫いて撃破している。


