■溢れ出る色気と止まらない躍進に目を奪われた第4話
第4話では、息子・朝雄(佐藤大空さん)を育てる毛脛モネ(秋元才加さん)の覚悟、久部の照明装置のパーライト盗み事件、まとまらない役者たちなど問題が次々と勃発。そんな中で感動を生んだのが、やはりトニーだった。
新しい名場面が生まれたのは、ゲネプロの最中。盗まれたライトを取り戻しにきた天上天下の黒崎は、団員を連れて劇場に押し入り、「久部を信じるな」と声を荒らげる。久部が「ゲネの最中なのが分からないのか!」と黒崎を咎めるも、相手も引かず「みなさん!あいつを信じちゃダメだ!」と久部への糾弾を続ける。ゲネプロどころではない口論が行われ、突然の出来事にモネをはじめ劇場の面々は動揺してしまう。
だが、そんな空気を一変させたのがトニーだった。場の混乱をかき消すように、舞台上のトニーは「ではヘレナ!」と大声を上げ、モネを抱きあげてライサンダーを演じ続けた。その声は優しく甘く、迷いや戸惑いがない。大胆さと繊細さが混じり合ったその演技に、久部は再び目を見開き、その場にいた全員が息を呑んで彼に夢中になった。
優しいピアノ曲をバックにした感動的な演出が用いられたこのシーン。トニーに触発され、リカまでもが魂の籠った演技をみせる。演劇素人の集まりが役者集団に変わったこの瞬間、舞台は黒崎さえ呑み込んでしまうほどの熱を帯びていた。彼らの姿を見て、思わず久部のように前のめりになってしまったという視聴者も多いのではないだろうか。
前話に続き、トニーの動きで場が動いた。言葉を多く語らなくても空気が変わる。人を惹きつけ、場の中心を自然と自分に引き寄せる市原さんの演技は、本作の大きな見どころの1つともいえる。
第4話では、トニーの名シーンがもうひとつあった。
ゲネプロの余韻がまだ残る中、劇場を後にしようとした天上天下のライサンダー役・アキラの前に、トニーがそっと立ちふさがる。そして、口から出たのは「セリフがないときの演技はどうしたら良いか」という素人役者としての素朴な質問だった。ライバルであろうと黒崎から煽られようと、ライサンダーを演じるという使命を持ったトニーには全く関係ないのだ。
先ほどの熱さとは打って変わって声は低く小さいが、その瞳には役を極めようとする強い意志と情熱が宿っているのがわかる。トニーの中でふつふつと燃え上がる役者魂に胸を掴まれると同時に、市原さんの表情コントロールの上手さを実感する名シーンだった。
この一連の流れに、視聴者からは「トニー最高」「目が離せない」「市原隼人の演技にゾクゾクした」といった声が続出。人々を釘付けにしたトニーは、今後もその一挙手一投足に注目が集まることだろう。
言葉は少ないながらも強い存在感を放つトニーは、舞台の幕があがるその時に、ますます強い輝きを放ってくれるにちがいない。


