■右京の心に刻まれた女性…season13第10話「ストレイシープ」の西田悟巳

 season13第10話「ストレイシープ」の西田悟巳(石田ひかりさん)は、事件の犯人ではない。しかし、右京を精神的に苦しめた女性としては、忘れてはならない存在だろう。

 右京の周りには、かつての妻・宮部たまきが「花の里」を去って以来、親しい女性の存在はほとんどなかった。しかし悟巳は、右京との恋愛展開を期待してしまうほど、謎めいた存在として描かれた。

 このエピソードの冒頭では、右京と親しくなり、のちに自ら命を断った女性・悟巳との出会いと別れが語られる。

 遺書には、右京に想いを寄せていたこと、そして彼には月本幸子という特定の女性がいると知り、絶望して命を絶ったと綴られていた。「馬鹿な勘違いを……」とつぶやく右京の姿は、見ているだけで痛々しいほどだった。

 しかし、この自殺はある人物が仕掛けた「右京への復讐」だった。男女の機微に疎い右京は彼女の真意を測りかねていたが、次第にその裏にある陰謀に近づいていく。

 すべては、ある人物が右京への復讐のために演出した「悟巳との出会いと別れ」だったのである。悟巳はその人物の協力者であり、右京を陥れるために近づき、計画通りに自殺した。

 彼女はいつしか右京に心を寄せていったが、計画を完遂。右京は彼女の気持ちに応える気はなかったものの、結果としてその存在は彼の心に深く刻まれることになった。右京がこれほどの精神的なダメージを与えられた事件は、かなり珍しい。

 物語のラストで、右京が1人、悟巳からの手紙を読み、ともに過ごした時間を思い出すシーンは切なくも美しかった。右京の数少ない女性との親交が描かれ、重苦しい雰囲気の中で彼の内面を掘り下げた傑作回である。

 

 『相棒』シリーズの魅力の1つとして挙げられるのが、強烈な個性や深い背景を持つ犯人たちの存在だろう。特に右京をも苦しめる犯人の存在は、物語をドラマチックに盛り上げてくれる。

 season24では、どんな犯人たちが右京と亀山薫(寺脇康文さん)を追い詰めるのか。新たな強烈なキャラとの出会いにも期待したい。

  1. 1
  2. 2
  3. 3