意外な弱点は「女性」…?ドラマ『相棒』杉下右京を追い詰めた「キケンな女」たちの画像
水谷豊  写真/ふたまん+編集部

 2025年で放送開始から25周年を迎え、新シーズンも放送中の『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)。水谷豊さん演じる主人公の杉下右京はこれまで数々の難事件を解決してきたが、中には彼が相当な苦戦を強いられた相手も存在する。

 興味深いことに、これまでに右京を追い詰めた人物を思い返してみると、女性が少なくない。男女の機微に疎いという弱点を持つ右京は、意外と女性にも弱いのだろうか……?

 今回は、そんな右京を追い詰めた女性たちについて振り返っていこう。

※本記事には作品の内容を含みます 

■母の執念に戦慄!season9第10話「聖戦」の富田寿子

 season9第10話「聖戦」の富田寿子(南果歩さん)は、特命係が最も苦戦を強いられた犯人の1人である。特命係は証拠をつかめず、あらゆる手段を講じても寿子はその上をいく。彼女の犯罪計画は恐ろしいほどの徹底ぶりだった。

 物語は、消費者金融の営業担当・折原忠志が自宅で爆死するところから始まる。彼は12年前、薬物の影響で男性を轢き殺した過去があった。そのため、その男性の母親である寿子が最重要容疑者として浮上する。

 質素な生活をするごく普通の主婦ということ、さらにはすぐに別の容疑者が現れたことから、寿子はすぐに容疑者リストから外された。しかし、右京は神戸尊(及川光博さん)とともに彼女の家を訪ねた際、随所に怪しさを感じとり、彼女が犯人であると確信して捜査を開始した。

 この寿子という人物は、とにかく曲者で、綿密な準備をしたうえで完全犯罪を遂行していた。『相棒』史上、最も周到な準備をした犯人といっても過言ではないだろう。

 彼女は息子を失うまでは、普通の主婦だったが、その死をきっかけに夫との関係が悪化。そんな中、加害者の男性が幸せな家庭を築いていると知り、復讐を決意した。

 「母の執念」が、普通の主婦を冷酷な爆弾魔へと変貌させたのだ。爆弾をひっそりと製作し、証拠を完全に隠滅したうえで犯行に臨んだ。

 右京がどのような策を考えても、寿子はすでに対応済みという完璧な準備をしていた。爆弾製造の痕跡は、リビングのありとあらゆるものを処分し、徹底的に清掃することで検出不可能にする。

 右京の揺さぶりにも笑顔で、「もし私が犯人だとしたらこう言いますね……だったら、証拠をもってこい!」と返すほどの肝の据わり方には、ぞっとさせられる。

 先の先を読むように右京の追及を退ける寿子。揺さぶりや駆け引きも通用せず、余裕の態度を崩さない彼女の姿には、いら立ちすら覚えるほどだ。「ごく普通の主婦」のはずだった女性にここまで追い詰められてしまうとは、まったく予想外の展開だった。

■右京も認める危険な女性…season17第6話「ブラックパールの女」他3話の遠峰小夜子

 「ブラックパールの女」こと遠峰小夜子(西田尚美さん)は、長きにわたり犯罪の裏側で暗躍する危険な女性である。彼女は冠城亘(反町隆史さん)が相棒だった時代に3度登場し、その危険性を見せつけた。 

 初登場はseason17第6話「ブラックパールの女」。彼女は当時から、未決囚として拘禁されていた。真珠養殖詐欺を働き関係者を毒殺した疑いから、「平成の毒婦」「ブラックパールの女」などと呼ばれている。

 そんな彼女は弁護士を通じて特命係に接触し、ある事件への疑義を伝える。そして実際に特命係を動かし、殺人事件を解決に導いた。この行動が善意からではなく、囚われの身でありながら人を操るのを楽しんでいるというのが厄介なところだ。この行動と思想は、右京に「彼女は危険です」と言わしめるほどだった。

 その後もseason18第17話「いびつな真珠の女」、season19第7話「同日同刻」に登場。そのたびに拘置所から特命係に接触し、巧みな話術と、一度見た顔を一生忘れないという特殊能力で右京さえも利用する。

 「いびつな真珠の女」では冠城の大切な人を恐怖に陥れ、新たな犯罪者を生み出して冠城をも“ゲーム”に巻き込んだ。「同日同刻」では自身の信奉者を犯罪へといざなった。

 暇つぶしのように事件をもてあそび、獄中にいながら人の人生を狂わせる。その危険な考えとカリスマ的な存在感には、冠城も魅了されかけたほどだ。些細な情報だけで人を操る小夜子を、右京ですら止めることができなかった。右京は「いびつな真珠の女」で再び言った。「彼女は危険です。拘置所にいてさえも」と。

 通常は、犯人を逮捕すれば事件は終わる。しかし、彼女は収容されている身でありながら次々と事件を引き起こすので、右京でも手出しができないという特異性を持っている。次は一体どのような形で特命係に関わるのか、再登場も期待せずにはいられない悪魔的な魅力を持つ人物である。

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