■追い詰められた子どもが起こした自殺未遂と殺傷事件
物語後半では、紗南と秋人の恋愛模様が複雑化していく中で、少女漫画としては異例の殺傷事件と自殺未遂が勃発する。
きっかけは些細な出来事だった。ある日、秋人はクラスメイト・小森和之から「生活調査の“親しい友人”欄に名前を書いてもいい?」と尋ねられる。しかし、相手の名すら知らなかった秋人はそれを断った。気弱な彼は秋人に密かな憧れを抱いていたが、この一件で秋人に拒絶されたと捉えてしまう。
翌日、小森の母親が学校に駆け込み“羽山に傷つけられた。自殺する”と書き置きを残して息子が行方不明になったと訴える。自分への好意と憎しみが綴られた小森の日記を見た秋人は動揺しつつ、「F湖のほとりの樹海に行く」という言葉を頼りに彼を探しにいくことに。過去に多くの人を傷つけた自分を思い返し、今度は人と真剣に向き合うことを決意したのだ。
樹海で発見した小森は虚ろな表情で一緒に死のうと言い出し、明らかに正気ではない。秋人は“自殺はしない。お前がやれ”とけしかけ、小森は勢いのまま彼の腕をナイフで刺してしまう。
さらに秋人は冷静に“そこじゃない”と告げ、ナイフを自らの心臓に向けさせる。だが小森は腕から流れる血を見て我に返り、泣き崩れるのだった。
帰路、秋人は小森との会話の中で、彼が歪んだ原因が過保護で支配型の母親にあると察し、不器用ながらもアドバイスを送る。そして小森もまた、「友達になって」と素直な気持ちを口にし、心を取り戻していく。
だが、秋人は出血多量により、駅で紗南や警察と合流した直後に倒れ、心肺停止状態に。そして、一命は取り留めたものの、片腕に麻痺が残ってしまう。一方、小森は涙ながらに母親に本音を吐露し、その後、事情聴取を受け保護観察処分となる。
このエピソードは、秋人と小森を通じて、親子関係の歪みと子どもの深い孤独を鋭く描き出した衝撃的な展開であった。連載当時、生々しいこの出来事に恐怖を感じた読者も多かっただろう。


