
東野圭吾さんの小説を原作とするドラマ『ガリレオ』は、放送終了から10年以上経った今でもたびたび話題にのぼる人気シリーズだ。
福山雅治さん演じる主人公の天才物理学者・湯川学は、さまざまな難事件を科学的に解明していく。対する犯人も、警察が思いもよらないような科学的な方法で犯行に及ぶため、まるで科学者同士の頭脳戦のようだ。
だからこそ作中には、常識では考えられない殺害方法や、かなり大がかりなトリックも数多く登場する。今回はその中でも特に、「犯行のためにそこまでするの?」と驚かされた事件を紹介したい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます
■恐るべし「自動殺人」の計画
まず紹介するのは、シリーズ最初の事件である「燃える!変人天才科学者」だ。物語は、住宅街にたむろしていた若者の1人が、謎の人体発火現象によって死亡したことから動き始める。犯人は機械工場に勤める金森龍男で、唐沢寿明さんが演じていた。
亡くなった若者は頭部が突然燃えたので、警察は発火の原因を特定できずにいた。幼い少女が“空に浮かぶ赤い糸を見た”と証言するも、それが何をしめしているのかさっぱり分からない。
結果として、警察は若者が所持していた花火の引火による事故との見解を強める。しかしそこで湯川が捜査に協力したことで、別の可能性が浮上してくる。
それが、炭酸ガスレーザーを使った計画的な殺人だということだ。金森は勤務先の工場で使用していた炭酸ガスレーザーを悪用したのだ。このレーザーは、一点に集中して照射すると発火する特性を持つ。
しかし、それを狙った場所に向かって照射するのは難しく、工場にある機械を持ち運ぶのも不可能だ。そこで金森は、複数の鏡を利用してレーザーを遠く離れた場所まで繋ぐという方法を実行した。少女が見た「赤い糸」とは、このレーザーの光だったのだ。
標的は動くので狙いを定めるのは非常に難しく、金森は何度も失敗を繰り返している。そしてついに、偶然すべての条件が揃った時に人体発火が起こったのだ。
レーザーの稼働は電話による遠隔操作で行われており、自動殺人とでも呼ぶべき手の込んだ計画だった。
■教祖が使う不思議な力の真相とは
次に紹介するのは、「幻惑す(まどわす)帰ってきた変人!」のトリックだ。この回では、湯川と「クアイの会」と呼ばれる新興宗教団体の対決が描かれている。
大沢たかおさん演じる教祖・連崎至光は、「送念」と呼ばれる不思議な力を持つとされていた。これは、相手に強い念を送って心を浄化させるというものだ。実際に連崎から送念を受け、“そのパワーに耐え切れなくなった”信者がビルから転落死したことで、彼の力は科学では証明できないものであるかに思われた。
この謎に挑戦する湯川は、クアイの会に乗り込み、自身に送念をかけるよう連崎に要求する。その時点ですでに、湯川には全ての謎が解けていた。
送念の正体は、電子レンジにも使われているマイクロ波だった。これを人間が受け続けると、体温が急上昇して苦痛を味わい、眼球は白く濁ってしまう。過去の被害者はマイクロ波を受け続けたせいで、苦しんで転落死してしまったのだ。
湯川は対策として、マイクロ波を遮断するシールドクロスを貼ったサングラスで眼球を保護。さらに感熱紙が使用されている切符が黒く焦げるのを見せつけ、送念が不思議な力ではなく物理現象だという事実を身を持って証明する。
その後、連崎が座っていた場所からマイクロ波の放射装置が発見され、送念がインチキだったと明らかになった。それにしても、人間を殺すほどのマイクロ波を放射する装置とは、かなり大がかりである。ビルのブレーカーが落ちる原因にもなっていたので、かなりの高出力だったことがうかがえる。