仲良しだったのに深刻な仲違いに発展…篠原千絵『海の闇、月の影』や小花美穂『パートナー』も!少女漫画で「同じ男性を愛した双子ヒロイン」の画像
フラワーコミックス『海の闇、月の影』(小学館)

 あだち充さんの『タッチ』に代表されるように、昔から双子が主人公の漫画は人気だ。少女漫画にも双子が主役の作品は多く見られるが、双子ならではの入れ替わりや周りの勘違い、共に協力して困難に立ち向かっていく姿にワクワクさせられた読者は少なくないだろう。

 ところで、少女漫画における双子の姉妹は、同じ男性を好きになるという設定も少なくない。普段は仲の良い双子でも恋愛が絡むと関係がこじれてしまい、中にはそれがきっかけで悲劇的な結末を迎えてしまう作品もあった。

 ここでは、往年の少女漫画の中から、同じ男性を好きになった双子が最終的にどのような運命をたどったのか、代表的な作品を振り返っていこう。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■嫉妬心から恐ろしい事態に発展…『海の闇、月の影』

 篠原千絵さんの代表作の一つ『海の闇、月の影』は、『週刊少女コミック(現:Sho-Comi)』(小学館)で1987年から連載された、双子姉妹の壮絶な戦いを描いたダークサスペンスだ。

 主人公は、双子の女子高校生・小早川流水と流風。2人はもともと仲の良い姉妹で、共に陸上部の先輩・当麻克之に想いを寄せていた。しかし、克之が選んだのは流風であった。それを知った流水は、秘かに流風への激しい嫉妬心を抱く。

 そんな矢先、2人は未知のウイルスに感染し、特殊能力を手に入れてしまう。流水が抱いていた嫉妬心はウイルスによって増幅され、邪悪な感情へと変貌。手に入れた能力を駆使し、恐ろしい手を使って流水の命を狙い続けていくのであった。

 双子が同じ人を好きになるという展開は珍しくはないが、本作のようにそれがきっかけで命を奪おうとするまでに発展する展開は衝撃的だった。

 本作は克之をめぐる双子の争い、そしてウイルスを排除するための治療薬をめぐり、血なまぐさい戦いを軸に展開されていく。はたして克之と結ばれるのは流水か、流風か。そして、ウイルス治療薬を手にするのは2人のどちらなのか。最後まで目が離せない展開が続く名作である。

■双子同士の恋愛、人間の尊厳も問いかけた話題作『パートナー』

 1999年から『りぼん』(集英社)で連載された小花美穂さんの『パートナー』も、可愛らしい双子が主役のストーリーだ。

 本作は高校生の双子姉妹・桜沢苗と萌だけでなく、同じく双子の兄弟・添田賢と武が登場し、2組の双子による恋愛模様やミステリーが描かれている。

 萌は、落ち着いた優しさのある賢と両想いだ。しかし、実は苗もそんな賢に想いを寄せており、その気持ちを萌に指摘されたことで喧嘩になってしまう。

 翌日、萌に謝ろうとする苗だったが、その矢先、萌は不慮の交通事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。しかも萌の遺体は、病院の霊安室から突如として消えてしまうのだ。

 ところが後日、死んだはずの萌が姿を現す。残った苗、賢、武の3人は謎の萌の正体を突き止めるべく行動するうち、恐ろしい陰謀に巻き込まれていくのであった。

 作中、賢の弟・武は苗に好意を抱いており、2組の双子の間で四角関係のような複雑な恋愛模様が描かれているのも見どころだ。だが、本作は単に双子同士の絡み合った恋愛に焦点を当てるだけでなく、死んでしまったはずの妹が生き返るというミステリーへと発展していくのが面白い。

 とりわけ印象的だったのが、亡くなった萌を愛するがゆえ、賢が取った行動だ。あまりに切なく救われない展開は、読者に大きな衝撃を与えた。

 本作は双子同士の恋愛ドラマに加え、生命とは何か、また人間の尊厳とは何かという重いテーマを読者に問いかけている。小花作品ならではの、秀逸なストーリー性を堪能できる一作である。

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