■双子がお互いを思いやるからこその悲恋…『花衣 夢衣』
『花衣 夢衣』は、レディースコミック誌『YOU』(集英社)にて、1993年から連載された津雲むつみさんによる作品だ。
激動の昭和を生きた双子の姉妹・真帆と澪が、1人の男性を巡って波乱の人生を送るストーリーである。本作は2008年にフジテレビ系列の昼ドラとして、実写ドラマ化もされている。
17歳の双子姉妹、真帆と澪は、病気の父親を助けるためそれぞれ働いていた。しかしある日、澪だと勘違いされた真帆は暴行に遭い、子どもを授かることができない後遺症が残る。
その後、真帆は呉服屋の長男・羽嶋将士のことを好きになり、彼から求婚される。だが、妊娠が望めない事実を打ち明けられない真帆は将士の申し出を断り、失意の将士は妹である澪と結婚するのであった。
真帆も澪も誠実な将士に惹かれるものの、姉妹がお互いを思いやるからこそ、将士をめぐる恋愛も一筋縄にはいかず、将士もまた双子の間を行ったり来たりするのだった。
昼ドラ化された作品とあって、本作は最後まで愛憎渦巻くドロドロとした展開が続いていく。澪と真帆が老婆になるまで物語は続くのだが、1人の男性を巡って双子がどのような人生を送ったのか、壮大な愛の物語をぜひ読んでみてほしい。
双子は育ってきた環境が同じであることが多いため、価値観や好みが似ることは自然なことだろう。そう考えると、今回紹介した作品のように、同じ人を好きになる状況も、現実において起こり得ることなのかもしれない。
しかし、今回紹介した作品は、いずれも同じ人を好きになったゆえに姉妹の関係がこじれ、悲劇的な展開を迎えている。現実ではそうならないよう、双子それぞれが違う人を愛し、それぞれの幸せを見つけてほしいと願わずにはいられない。