アニメファンから“豊作”の呼び声が高かった2025年夏アニメ。80以上の作品が並び、話題性、クオリティ共に歴代トップクラスのクールとなりました。
今回は、ハイレベルな夏アニメラインナップの中から、「アナウンサーの皮をかぶったオタク」としても知られる田口尚平氏が、特に秀逸だった作品をピックアップ! 自身の目で観て選んだ「今からでも一気見する価値のある作品」を、熱い想いとともに“番付形式”で発表していきます。
現在フリーアナウンサーの田口氏は、ゲーム実況などで活躍する傍ら、毎クール放送されるアニメ作品をほぼ欠かさずチェックしているという生粋のアニメファン。そんな田口氏が“アニオタ目線”で選出した2025年夏のベストアニメは、はたしてどの作品なのか。いよいよラストを飾る【横綱編】を発表します!
【第3回/全4回】
■「さっさと付き合っちゃえよ!」第1位は『その着せ替え人形は恋をする』
悩みに悩みましたが、やはり今季の第1位は『その着せ替え人形は恋をする』ですね。シーズン2の作品になりますが、やっぱりすごい。
本作は雛人形職人を目指す高校生・五条新菜と、コスプレが大好きなギャル・喜多川海夢の恋と成長の様子が描かれています。いわゆる、「両片思い」というジャンルですね。
シーズン1では、雛人形制作が趣味の五条と、コスプレが大好きな読者モデルの海夢が出会い、彼女のコスプレ衣装を作ることをきっかけに関係を深めていきました。今は二人の距離感も縮まり、五条くんの家で海夢と一緒にご飯を食べるほどの仲になりました。
もう周りからみたら「え、付き合ってんじゃないの?」みたいな感じなんですけど、本人たちの認識的にはまだ付き合っていないみたいです。それを外から鑑賞させていただくことで得られる栄養が確かに存在します。若返った気がする。
この作品のすごさはまず、「コスプレ」という文化へのリスペクトの高さ。衣装づくりやイベントの詳細まで、細かく丁寧に愛をもって説明されています。それから登場人物たちは基本的にみんないいやつばかりで、誰かを否定するような表現が少なく、見ていて一切のストレスがないんです。俺たちの人生を肯定されているような気持ちになる。
海夢ちゃんも「好きなことはめっちゃ好きでよくない?」というスタンスで、作品の根底にもその空気がしっかり流れてる。本当に良い時代になりましたよね。やっぱりこう、好きなものを全力でやる! という姿を登場キャラのほぼ全てが応援していて、そこに泣けちゃうんですよ。コスプレで泣けるんだ! ってなる。
作画も一切妥協がなくて、キャラがぐるんぐるん動く。どのシーンも大切に仕上げられています。俺が高校生のころにこういった作品が流行っていれば、世界はもっと明るかったはず……。
それで、私が1位に推す決め手になったのは、19話で五条が海夢のカメラで試し撮りするシーン。制服姿の海夢をカメラ越しに撮りながら公園を歩く、コスプレとは関係のないシーンなのですが、POV視点で描かれていて、本当に“自分が公園にいる”かのような没入感がありました。あまり馴染みのない表現で、アニメーションとしての挑戦を全力でやっていることが伝わります。
海夢みたいな明るいギャルがヒロインになるっていうのも、時代の流れを感じますよね~。金髪ギャルとか読モって、いわゆる1軍女子みたいな存在じゃないですか。昔だと当て馬ポジションみたいな時が多かったと思うんです。最終的に沢子(『君に届け』)のような子が選ばれるみたいな。
そういう意味で言うと、沢子ポジションが今回で言う五条君なのかも。女性人気も高い作品なので、おそらく女性視聴者は「五条くんを振り向かせたい」という海夢の気持ちに共感しながら楽しんでいるんじゃないでしょうか。


