■変声期を迎えた男子の演技がリアルすぎる…!第2位は『カラオケ行こ!』
2位は『カラオケ行こ!』です。ヤクザがカラオケ大会の練習に中学生を突き合わせるっていう物語の設定がまず面白すぎる。常人には思いつくこと自体が不可能。
じゃあなんでヤクザがカラオケ大会するかっていうと、組長がカラオケ好きだから。それで、カラオケが下手な人間はいろいろあって組長直々にヘタクソな刺青を彫られてしまうと。ヤクザは刺青を入れられたくないので、カラオケがうまくならないといけない。各々で上達の道を探す中、ヤクザの成田(CV:小野大輔さん)が白羽の矢をたてたのが中学2年生の合唱部の男の子、岡くん(CV:堀江瞬さん)だったと。
そもそも原作が素晴らしいのはもちろんなのですが、これをアニメでやる良さは何より、XJAPANの『紅』、クレイジーケンバンドの『タイガー&ドラゴン』、ももいろクローバーZの『行くぜっ!怪盗少女』など実際の原曲が使われているところ。
また、堀江瞬さんが演じる主人公の岡くんなんですが、彼は変声期に悩んでいるんですね。合唱部でソロを任されているのですが、もう前の声が出ないかもしれない……みたいな悩みを抱えている。そんな悩みを抱えている子がヤクザに囲まれて『紅』を歌うシーンがあるんですが、“変声期の中学生の声”を表す演技があまりにも素晴らしい。改めて「声優さんってすごい!」と思い知らされました。
だって堀江さん、もう変声期とっくに終わっているはずなんですよ。だから実体験を思い出して演技していると思うんですが、変声期の合唱部の男の子が頑張って『紅』を歌うとこうなるだろうなって。漫画では体験できない音の部分を、うまく表現しているなーと感動しました。
あと、制作サイドからすると、実際の楽曲を使うときって著作権まわりで苦労することも多かったはずなんです。でも、作品としての完成度を高めるためにしっかり権利周りをクリアしたうえで、実際の曲を使っている。大変なはずなのに、そこを真摯に作っているなという感じが伝わりますね。
また堀江さんだけでなく、ヤクザの役を小野大輔さんが演じているんですが、これもまた“人たらし”な演技が素晴らしいんですよね。しかも本作は全部で6話なので、アニメーション作品に触れるきっかけとしても見やすい作品だと思います。

【プロフィール】
田口 尚平(たぐち しょうへい)
2015年にテレビ東京にアナウンサーとして入社後、スポーツ中継やバラエティ番組を担当。2020年にテレビ東京を退職後、早稲田大学院でMBAを取得し「オタクを極める」という目標を掲げて「Gamchew」を創業。ゲーム実況をはじめ、エンタメ領域の仕事を続けながら、企業のビジネス支援活動なども行っている。元TBSアナウンサー・宇内梨沙さんとのポッドキャスト番組『うない、たぐちの「オタクというには限界です。」』も好評放送中。