■居場所を探し続けた人生の旅人「雪子」
最後は、令子の腹違いの妹・雪子おばさんこと宮前雪子を演じた竹下景子さんを見ていこう。純や蛍にとっては家族同然の雪子おばさんは、時に厳しくもあるがいつも優しい大人の女性だったが、その人生は波乱万丈なものだった。
東京に住んでいた雪子は、長い間不倫関係にあった井関利彦(村井国夫さん)の子どもを堕胎したことで疲れ果て、東京を捨てて五郎の住む北海道に渡る。
そんな雪子に惚れたのが、草太兄ちゃんこと北村草太(岩城滉一さん)だった。草太には恋人・つらら(松田美由紀さん)がいたのだが、雪子に心を奪われた草太のせいで関係は破綻。つららは後に、夜の札幌に消えていく。ひたむきな彼女が振り回される姿は悲しいが、最後は幸せな結婚ができたと明かされている。
雪子自身も順風満帆ではなかった。麓郷に馴染もうと黒板家の家事と子守りをし、草太の牧場で働くのだがどうしてもどこか浮いているのだ。ついには、つららからは「覚悟がないなら出て行って」と言われ、草太の父・清吉(大滝秀治さん)からは「一生暮らす気があるのか」と詰められてしまう。
井関と東京に想いのあった雪子は東京に戻り、そこで井関に手編みのマフラーを渡そうとする。が、井関は受け取らず彼女の恋は改めて終わった。
心を決めて富良野に戻った雪子。だが草太とも結ばれることはなく、雪子は草太がボクシングの試合に敗れて以来、会わなくなった。
最終回の第24話。令子の死を機に東京に戻っていた雪子は草太に手紙を書く。そこには、「私は最後まで旅人で終わった。今度そちらで暮らすなら、その時こそ私は住民になりたい。しっかりと根をおろしたい」と綴られていた。
のちに雪子は離婚した井関と結婚して東京に戻り、大介という子を授かる。しかし、井関はまた不倫に走り離婚。大介も引き取れなかったことで再び富良野に戻る。
なんと波乱に満ちた人生だ。旅人として彷徨った雪子は、最後は自分の納得する形で富良野に根を下ろせたのだろうか……。その心を思うと少し切なさが残る。雪子はときどきタバコを吸いながら何やら思い悩む描写があるが、竹下さんが演じるその横顔はいずれも美しいものだった。
改めて振り返ると、登場する女性の多くはハードな人生を送っている。だが、悩みもがきながらも懸命に生きる彼女たちの姿が、作品に深みを持たせたことには違いない。