大人気漫画「幻の0巻」で描かれた“貴重すぎる内容” 重要な伏線が明かされた作品も…の画像
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』キービジュアル (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 コミックスは通常1巻から始まるが、作品の中には「0巻」というものが存在する作品もある。「0巻」は本来のコミックスに比べるとページ数こそ少ないものの、その多くが本編前のエピソードを描いた前日譚や未発表作品、番外編となっており、ファンにとってはうれしい情報が詰まった一冊だ。

 しかし、ほとんどは劇場版の入場者特典やアニメDVDの初回予約特典として数量限定配布されるアイテムとなっており、後から手に入れようと思ってもなかなか難しい場合も多い。中古市場で高値がつけられている「0巻」も珍しくないのだ。

 そこで今回は、人気漫画の「0巻」とその貴重な中身に迫ってみたい。

※本記事は各作品の内容を含みます。

■無限城編も大ヒット上映中!『鬼滅の刃 煉獄零巻』

 たとえば、現在アニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が大ヒット公開中の吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』では、2020年の公開映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の入場者特典として、「煉獄零巻」なるコミックスサイズの冊子が配布された。

 内容は、「書き下ろし短編漫画」「大正コソコソ噂話」「テレビアニメをまとめた血風剣戟冒険録」「外崎春雄監督と松島晃氏の対談」「声優のインタビュー」で構成。84ページながら大ボリュームの一冊で、煉獄杏寿郎を主人公にした19ページの短編「煉獄零話」は『週刊少年ジャンプ』2020年44号にも掲載された吾峠氏の書き下ろし作品。コミックスと同じ背表紙のデザインを採用した、この豪華特典を目当てに劇場に足を運んだという人も多かったのではないだろうか。

 物語は、隊士になった杏寿郎が父・槇寿郎に「お前も千寿郎も大した才能は無い くだらん夢を見るな」と突き放されるところから始まる。杏寿郎はそれでも明るく振る舞い、そんな兄を尊敬する千寿郎は初任務に向かう彼に「兄上みたいになる」と想いを伝えた。杏寿郎はその言葉で、かつて自分に「貴方みたいになりたい」と言ったある隊士のことを思い出す。

 杏寿郎はこの時、彼がいずれ死んでしまう気がして言葉に詰まってしまったのだ。それと同時に、父が自分たちに冷たいのは死んでほしくないからではと考えを巡らせていた。

 そして、嫌な予感が的中してしまう。初任務で鬼の元に辿り着いた際に、殺された遺体の中にあの隊士がいたのである。人間を殺され怒った杏寿郎は、鬼が繰り出す強力な笛の攻撃を自らの鼓膜を破ってかわし首を斬った。

 この判断ができたのは、隊士たちが指文字で鬼の能力を示してくれていたから。杏寿郎は命をかけて想いを繋げた彼らを慈しみ、「君たちのような立派な人にいつかきっと俺もなりたい」と決意を新たにするのだった。

 それ以来、杏寿郎は人を守るために戦い抜き、無限列車で炭治郎たちにその想いを託す。吾峠氏も「しみじみと、良い子だな、主人公のようだなと思いました。」とコメントしていたが、熱く強い生き様を見せてくれた杏寿郎はまさに少年漫画の主人公そのものだ。

■前身となった未発表漫画が読めるレアな一冊『進撃の巨人 0巻』

 壮大なスケールの物語と張り巡らされた伏線の数々で世界中の人々を魅了した『進撃の巨人』。2013年に始まったアニメも同様に人気を博し、同年7月には『進撃の巨人DVD/BD』1巻がリリース。その際に「0巻」が初回特典として配布された。

 中身は、作者の諫山創氏がデビュー前の19歳時に『週刊少年マガジン』のマガジングランプリで佳作を受賞した65ページの読切漫画。ゲーム『マブラヴ オルタネイティヴ』に影響を受けて描いたという、『進撃の巨人』の前身作品である。

 物語は、地球環境に危機を覚えた宗教科学団体が人間を捕食する巨人を作って「人類駆逐計画」を目論み、人類がそれに抗うというもの。『進撃』とは違うものの、人類の8割が死滅したという点は「地ならし」に通じるものがある。

 残った人類は大木の壁の中で暮らしながら軍隊を作り、ブレードで武装して巨人に戦いを挑む。ちなみに、立体機動装置はなくフィジカル勝負である。

 主人公のむらくもは、軍の中でも高い戦闘力を誇る前衛兵だ。見た目はミカサにも似ているが、巨人駆逐への意志にはエレンの要素がある。また、彼に弟子入りを懇願するつばきにエレン+ガビっぽさを感じたのは筆者だけだろうか。

 むらくもはその後、巨人化疑惑を向けられるが、自分を囲んだ兵士の中に巨人に喰われたはずの父を発見。切りつけると父を含め複数が巨人になってしまう。むらくもも捕食されるが、なんと彼も巨人化! しかも初期から言葉を話せて知性があり、巨人の弱点である“主核”を狙って次々と駆逐していく。

 だがそれも長くは続かず、巨人と相打ちになってしまう。物語は最後に、「巨人に打ち勝てるのは純粋な正義の心」だと明かされて終わる。

 諫山氏は「漫画の描き方もペンの使い方も知らない頃に描いた作品で恥ずかしい気持ちでいっぱい」とコメントを残していたが、『進撃』に繋がる要素も散りばめられており、読み応えのある作品だ。

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