■読んでおくと本編の面白さが2倍になる『HUNTER×HUNTER 0巻』
最後は、2013年に公開された初の劇場版『HUNTER×HUNTER 緋色の幻影』の来場者特典として配布された「0巻」を振り返る。
中身は作者の冨樫義博氏が幻影旅団編の最中に描きあげた幻のネーム『クラピカ追憶編』を漫画化したもの。また、漫画の最後には「冨樫義博氏の一問一答」や「キャラクター設定画集」も掲載された。
『クラピカ追憶編』は、クラピカの幼少期が描かれた作品になっている。
感情が高ぶると目が美しい緋色に変化するクラピカらクルタ族129人は、世間から身を隠すように森の中でひっそりと暮らしていた。ある時クラピカは、親友のパイロとともに森の中で倒れている女性を介抱し、親しくなる。シーラというその女性はお礼に自分が大切にしている本「Dハンター」をくれ、2人は本に書かれたハンターの冒険を読んで外への憧れを強めていく。
特にクラピカには、かつて自分を庇って足と目を犠牲にしたパイロを治すために外で医者を捜したいという強い想いがあった。シーラが姿を消した後、クラピカは里を出る試験をクリア。パイロからのエールを受け、華々しく旅立った。
その6週間後、クルタ族128人惨殺のニュースが世界を駆け巡る。発見者は森に迷い込んだ女性で、見るも無残な遺体からは両目がくり抜かれており、緋の眼を引き出すために子どもを痛めつけた形跡もあったという。そして傍らには「我々は何者も拒まない だから我々から何も奪うな」というメッセージが残されていた。
後に本編で、シーラが流星街出身かつ旅団の初期メンバーの幼馴染だったことが明らかになる。これによってシーラが何らかの形でクルタ族虐殺に関わっていることがほぼ確実になったが、そもそもなぜシーラは森に来たのか、遺体発見者は彼女だったのか、このメッセージは本当に流星街or旅団のものなのか……謎は残されたままだ。
また、その後の「一問一答」で冨樫氏は、旅団とクラピカの今後を問われ「全員死にます」と答えている。ファンを惑わせるこの答えの真相はいつか明かされるのだろうか。
このように、本編に通じる重要な伏線が明かされることもある「0巻」。作品をさらに楽しむきっかけにもなるので、チャンスがあればぜひ読んでみてほしい。