■オカルトだけでなく人間の闇にも迫る……『夕闇通り探検隊』

 ふだん、何気なく暮らしている日常の片隅に、不意に姿を現す異質な存在たち。怪異との思いがけない遭遇は都市伝説の醍醐味のひとつだが、そんな恐怖体験をゲーム内で存分に味わえるのが、1999年にスパイク(現:スパイク・チュンソフト)より発売された『夕闇通り探検隊』だ。

 同作は、前述した『トワイライトシンドローム』の一部スタッフも携わったホラーアドベンチャー作品。高度成長期にベッドタウンとして発展した「陽見市」を舞台に、「人面ガラス」なる怪異と遭遇してしまった中学生たちが、街でささやかれるさまざまな謎や噂と向き合っていくストーリーだ。

 『トワイライトシンドローム』同様、キャラクターは実写を取り込んで、その動きをドット絵にする手法を採用。時折示される一枚絵や背景には実写画像が使用される場面もあり、「陽見市」を駆け回る主人公たちのリアルな息遣いが堪能できる。

 街を駆け回り、噂の真相を解明していくパートは実に楽しいのだが、一方で謎を解き進むことで恐怖の実態があらわになっていく展開が見事なのだ。

 たとえば「花子さんのお墓」を探すエピソードでは、実際にその墓を捜索するストーリーが展開される。『トワイライトシンドローム』と同じような横スクロール画面で移動するのだが、途中の交差点で不気味な少女と出会う。

 すると突然主人公の一人称視点になり、パノラマモードという3D画面に切り替わるのだ。そして視界を動かして周囲を見渡すと、いきなり目の前に少女が現れるのだ。

 彼女は「このまま行ったら死んじゃうんだよ」という意味深な言葉を残していなくなり、主人公一行は目的地へとたどり着く……。ゲームならではの視点変更を巧妙に用いた恐怖演出に驚かされる。

 なお、豊富に用意されたシナリオは定番の心霊話ばかりではなく、思春期の子どもたちによる人間の内面の怖さを描いたものもあった。直接的な恐怖シーンよりも、人々の暮らす街の片隅に「人ではない、なにかがいる」という不穏な気配が、プレイヤーの心を少しずつ恐怖に染め上げていく、そんなゲームである。

■キャラゲーと侮れない本格的な恐怖……『ゲゲゲの鬼太郎』

 水木しげる氏による名作漫画『ゲゲゲの鬼太郎』。ファミコンのアクションゲームなどは有名だが、1997年にバンダイより本格的なホラーゲームが発売されたことをご存じだろうか。

 PS用ソフトとしてリリースされた本作は、3Dで表現された舞台を探索するアドベンチャーゲーム。原作タイトルから、いわゆるキャラゲーと思われがちだが、実は本作は怪談系の本格的ホラー作として知られている。

 「学校編」「ゲゲゲの森編」「肉人形編」の3シナリオが用意されているが、主人公は鬼太郎ではなく、事件に巻き込まれた一般人だ。そのため主人公は怪異と戦う力を持ち合わせておらず、鬼太郎が主人公を助ける役割を担うことになる。

 筆者が同作と出会ったのは幼少期の頃。「鬼太郎のゲームだ」と軽い気持ちでプレイしたのだが、不穏なフィールドで怪異に追い回され、一人きりで逃げ回ったときの恐怖が、今も鮮烈な記憶となって焼き付いている。

 初代PSのいわゆるローポリゴンで表現された舞台やキャラクターは、むしろ仄暗いシナリオの雰囲気や空気感に絶妙にマッチ。「いざとなれば鬼太郎が助けてくれる」などという楽観的な考えが吹き飛ぶほど、気味の悪い恐怖シーンだらけだ。

 とくに「肉人形編」で描かれた恐ろしすぎる「しきたり」の顛末や、「さんぬき様」という肉人形の妖怪のおぞましい真の姿などはトラウマ級の怖さだった。


 学校の怪談や街で語り継がれる噂となり、人々の恐怖心と好奇心を刺激し続ける「都市伝説」の数々。今回紹介した作品は、いずれも90年代の初代PSの作品だけに、今ほどリアルな画質だったわけではない。だが、それが逆にプレイヤーの想像と恐怖心を駆り立てるエッセンスになった側面はあるだろう。

 当時ならではの表現手法がめじろ押しな秀逸な都市伝説ゲーの数々を、一度自身の目で確かめてみてほしい。

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