『ジークアクス』はハッピーすぎ…!?歴代『ガンダム』もっとも「バッドエンド」な最終回といえばの画像
DVD『機動戦士Zガンダム Volume.1』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ (C)創通・サンライズ・MBS

 『ガンダム』シリーズのテレビアニメ最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』は、2025年6月24日の放送で最終回を迎えた。

 激しい戦いの果てに、主人公アマテ・ユズリハをはじめとする多くのキャラクターたちの表情は明るく、たしかな希望が描かれた。戦争を背景に描かれる『ガンダム』シリーズの中では、かなりのハッピーエンドといえる終わり方だったのではないだろうか。

 その一方、長いシリーズの歴史を紐解くと、あまりにも悲惨な結末を迎えた主人公も少なくない。

 そうした『ガンダム』作品の中から、「もっともバッドエンド」だと感じた主人公たちに着目し、その過酷な結末をあらためて振り返ってみたい。

※本記事には『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の核心部分の内容を含みます。未視聴の方はご注意ください。

■勝利の代償はまさかの精神崩壊…『機動戦士Zガンダム』

 テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンは、「バッドエンドを迎えた主人公」の代表格といっても過言ではないだろう。

 一年戦争から約7年後の宇宙世紀0087年に起こった「グリプス戦役」を舞台に描かれた本作。物語が進むにつれて戦いは激化し、カミーユの仲間のカツ・コバヤシやエマ・シーン、さらにはティターンズ側のジェリド・メサやレコア・ロンドといった主要人物も戦場に散っていった。

 歴代屈指のニュータイプ能力を持つとされるカミーユは、その力の大きさゆえに、数多くの“死”を敏感に感じ取ってしまい、次第に精神をすり減らしていく。

 そして迎えた最終決戦では、宿敵であるパプテマス・シロッコと激闘を繰り広げる。Zガンダムのウェイブライダー形態に貫かれたシロッコは、死の間際に「私だけが死ぬわけがない。貴様の心も一緒に連れていく」と言い放つ。その言葉とともに、シロッコの体からは青い光があふれ、その光がカミーユに降り注いだ。

 その後、メタスで駆けつけたファ・ユイリィが目にしたのは、精神が完全に崩壊したカミーユの姿だった。いまだ続く戦闘の光や宙域に漂う機体の残骸を見たカミーユは、「大きな星がついたり消えたりしている」 「大きい……彗星かな」などと幼い子どものようなセリフをつぶやいている。

 これまで最前線に立って強敵たちに打ち勝ってきた若き主人公が、正気を失った姿はあまりにも痛ましく、残酷に感じられた。

 なお続編の『機動戦士ガンダムZZ』にもカミーユは登場。こちらの最終話ではその後無事に回復を遂げたのか、ファとともに浜辺を走るシーンが挿入されていたのが救いである。

■少年が目の前で見た戦争の過酷な現実『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』

 OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、一年戦争時の中立コロニー・サイド6の“リボー”で繰り広げられた小規模な戦闘を、民間人の少年の視点を中心に描いた異色作だ。

 主人公は、小学5年生のアルフレッド・イズルハ(アル)。ジオン兵に憧れる彼は、ある日、連邦軍との戦闘で撃墜されたザクの墜落現場に居合わせ、ジオンの新米パイロット、バーナード・ワイズマン(バーニィ)と出会う。

 それをきっかけに、アルは秘密裏に市街地へ潜入していた特殊部隊・サイクロプス隊と関わりを持つようになり、彼の監視役となったバーニィとは兄弟のような絆が芽生えていく。

 だが、そんな穏やかな時間は長くは続かない。サイクロプス隊は、連邦の新型モビルスーツ「ガンダムNT-1(アレックス)」の奪取に失敗し、バーニィを残して部隊は全滅。さらにその失敗を受け、サイド6への核攻撃の可能性が浮上する。

 その核攻撃を阻止するため自力でガンダムを破壊することを決めたバーニィは、アルと一緒に損傷したザクII改を修復。バーニィは決死の覚悟で最新鋭のガンダムNT-1に挑む。

 だが皮肉なことに、バーニィの作戦決行直前にジオン艦隊が投降したため、サイド6への核攻撃は回避。その情報を知らないバーニィの戦いは始まっており、アルは「もう戦わなくていいんだ!」と必死に叫びながらバーニィを止めようとするが、その声は届かなかった。

 壮絶な一騎討ちの末、バーニィのザクII改はガンダムNT-1を戦闘不能にまで追い込んだが、同時にガンダムのビームサーベルによってコックピットを貫かれる。

 放心状態のアルのそばで、兵士が口にした「バラバラに吹っ飛んじまってる」「ミンチよりひでえよ」のひと言が、 彼の最期の凄惨さを物語っていた。

 そして当人たちは知らないが、実はガンダムNT-1のパイロットは、アルの家の隣人であり、バーニィと互いに好意を寄せあっていたクリスチーナ・マッケンジーだったことも悲しみを増幅させた。

 なお、本作のシリーズ構成を担当した結城恭介氏によるノベライズ版では、バーニィが生き延びるというかたちにラストが改変されている。その本のあとがきには「苦悩の末に蛇足と知りつつあえてこうした」と書かれており、いかにOVAで描かれた結末が残酷だったのかを物語るエピソードといえるかもしれない。

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