■お嬢様がワイルドな男を好きになる典型的パターン『有閑倶楽部』白鹿野梨子
次は、世間知らずのお嬢様が、やさぐれたワイルドな男性を好きになってしまう……という典型的なパターンを紹介したい。
それが登場するのが、80〜90年代の『りぼん』を牽引した一条ゆかり氏の『有閑倶楽部』である。
本作は、超セレブ高校生の6人がさまざまな事件に挑む学園ストーリーだ。メンバーの一人・白鹿野梨子は茶道家元を母に持つ生粋のお嬢様で、男性を苦手としていた。しかしある日、本屋で万引きをする刈穂裕也という男性に出会い、さらに酔っ払いから助けられたことをきっかけに、徐々に惹かれていく。
最初の出会いが万引き現場という時点で、裕也はろくでもない男性なのが分かる。しかしその危険な香りにこそ、世間知らずの野梨子は強く惹かれてしまうのだ。
野梨子を心配する幼馴染の菊正宗清四郎は「住む世界のちがう男です」と忠告するも、2人の恋は止まらない。しかし清四郎の言う通り、生きてきた世界が違いすぎる2人の前には、やはり前途多難な道が待ち受けているのであった。
■フォーリンラブのお相手は正統派プレイボーイ『ツルモク独身寮』白鳥沢レイ子
最後は、青年漫画誌『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で、1988年から1991年まで連載された窪之内英策氏のデビュー作『ツルモク独身寮』から、白鳥沢レイ子という、見た目にも強烈なインパクトを放つお嬢様を紹介したい。
レイ子が心を奪われた相手は、主人公・宮川正太の同僚である杉本京介だ。京介はナンパが好きなプレイボーイのイケメンキャラ。
2人の出会いは、京介がレイ子の抜群のスタイルに目を奪われ、“可愛いと思って”彼女をナンパしたことがきっかけであった。
しかしレイ子は、そのナンパを真剣な愛情表現と受け止め「そんなあなたにフォーリンラブ」の名言とともに、杉本を猛烈に追いかけ回すこととなる。
レイ子は性に奔放な一面もあるが、白鳥沢財閥の令嬢であり、どこか憎めない純粋さも持ち合わせている。プレイボーイの京介以外の男性を好きになったなら、そんなに苦労して追いかけまわすこともなかったのでは……とも思ってしまう。
だが、このレイ子の一方的な猛アタックが、作品全体のコメディ要素を大いに盛り上げていたのも事実である。
漫画に登場するお嬢様キャラは、その多くが容姿端麗でお金に困っていない恵まれた女性として描かれている。彼女たちにふさわしそうな男性は多くいるのにもかかわらず、なぜか自分には釣り合わない、危うさを秘めた相手を選んでしまう傾向があるのが面白い。
だが、それは漫画の世界に限った話ではないのかもしれない。育った環境や価値観が異なる相手との恋愛は、苦悩を伴うこともある。だが、それを乗り越えた先には、より充実した毎日が待っているのも確かではないだろうか。


