
人気漫画には、読者が思わず憧れてしまうような魅力的な「お嬢様キャラ」が登場する。裕福な家庭に生まれた彼女たちは美しい容姿を持ち、その優雅な立ち居振る舞いに憧れた人もいるのではないだろうか。
しかし、このようなお嬢様キャラは、なぜか自分とは釣り合わないハードルの高い人を好きになる傾向がある。世間を知らないゆえか、ちょっと危険な香りのする男性に惹かれることが多いのだ。
今回は、そんなお嬢様キャラが繰り広げた、前途多難な恋の行方について紹介していきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■10代の青春を一人の同級生に捧げた女子高生『天使なんかじゃない』麻宮裕子
『天使なんかじゃない』は、1991年から94年に少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で連載された矢沢あい氏の人気作品だ。
本作は主人公・冴島翠と須藤晃の恋愛模様を主軸に描かれた学園ラブコメディだが、準主人公ともいえる麻宮裕子、通称“マミリン”の存在も非常に大きかった。
マミリンは美人で成績優秀だが、真面目すぎる性格ゆえ、少々冷たい印象を与えてしまうお嬢様キャラである。そんなマミリンは中学から高校にかけ、学校の人気者で王子様のような存在の瀧川秀一へ一途に想いを寄せていた。
5年間という長い片想いの間には、努力、忍耐、そして諦めや葛藤もあった。彼女は10代の多感な恋心のすべてを秀一に捧げていたのだ。
容姿端麗なマミリンは、もしもほかの男性に目を向けていたならば、これほど苦労せずに恋愛を成就させることもできただろう。しかし、この長きにわたる片想いこそが、マミリンに人間的な深みや強さ、そして可愛らしさを与え、主人公に引けを取らない人気キャラに成長させたのだ。
■もっと似合う男がいるのに哲也以外愛せないお嬢様『白鳥麗子でございます!』
鈴木由美子氏による『白鳥麗子でございます!』は、1987年から『mimi』(講談社)で連載された恋愛コメディだ。
プライドの高いお嬢様の主人公・白鳥麗子は、物心ついた頃から幼なじみの秋本哲也が大好きだった。哲也はイケメンキャラではあるものの、生粋のお嬢様である麗子とは違い平凡な家庭に生まれた庶民だ。2人は育った環境もあり、価値観によるすれ違いもよく生じていた。
類い希な美貌を持つ麗子は、哲也以外の男性からもモテる。たとえば、コミックス4巻「青い体験」のエピソードでは、麗子が沖縄で出会ったポルシェに乗るお金持ちの好青年も登場しており、麗子と釣り合いが取れそうなキャラとして描かれていた。
しかし麗子はどれだけ魅力的な男性が現れても、哲也以外を好きになることはなく、哲也にアタックをしては空回りをしてしまう……そんな不器用な姿も印象的だ。
高飛車でわがままな振る舞いとは裏腹に、哲也を想う気持ちだけは、純粋な普通の乙女と変わらないのだ。